第一章 傷を負った者達
しかし、人間は相手に自分の姿が見えないと目を覆いたくなるような残酷なことが出来る。
例えば、白人至上主義結社KKKは白いとんがり帽子に目のところだけ穴を開けて顔がわからないようにしてかぶる。そうすると、普段は気の弱い白人でも人が変わったように黒人に暴力を振るう。
これと同じように学校の檻に囲われたまだ稚拙で経験の浅い子供達が共同生活をすれば、事なかれ主義的な個人は強い個人の意識に吸収され判断力が弱まり、強い個人の感情が集団を支配し集団意識へと肥大化させる。すると共同意識が芽生え、その他大勢が弱者に襲い掛かる。人間は集団になるとどんなに高学歴であろうと知能が低下する。
なんだか、孟司の性善説を疑いたくなるが、個人的には人間は善も悪も内包して生まれてくると考えている。だから、生まれてくる家庭環境と社会環境についてどう前向きに考え人生を歩んで行くかが大切になると思う。それが自立した大人ではないだろうか。
産まれた場所、産んでくれた親、過去、現在は変えられない。
特に子供にとって親は避けられない関係を築く対象としての最初の人間である。子供は親の背中を見て良くも悪くも無意識に吸収して真似をする。
大人になるとその影響が顕著に表れてくる。本人は親を反面教師にして正しく生きようとするのに、酒癖が悪かったり、コミュニケーションがうまく取れなかったりと、親と行動が酷似してしまうことがある。それが、常識のある親から受けた影響ならいいが、偏った愛情を押し付ける、特にその自覚症状がない親は子供を駄目にすることがある。