起立性低血圧

起立性低血圧は、高齢者高血圧によくみられます。また糖尿病患者で、神経障害があるものでは、起立時の血圧低下が大きくなります。自律神経障害の病気では、シャイ・ドレーガー症候群という病気が有名です。この疾患では、起立性低血圧によって、立つことも歩くこともできないようになります。パーキンソン病などの多くの神経疾患でも、起立性低血圧がみられます。

高齢者では、また食後低血圧という症状を見ることがあります。食事後、二時間くらいすると、意識を失う症候で、やはり自律神経失調が推定されています。血圧変動には、一日二十四時間の変化も問題です。以前は、夜は血圧が低下するから、脳循環も低下するといわれてきました。

ところが、日内変動を診る血圧計ABPMを使用し、三十分ごとに血圧を測定したところ、血圧値が夜低下するパターンと低下しないパターンがあることが分かりました。前者をディッパー(dipper)、後者をノンディッパー(non-dipper)といいます。

ディッパーとは柄杓のことで、正常者はディッパーで、夜間に血圧が下がります。ところが血管障害のある高血圧では、ノンディッパーになりました。しかもこれらはMRIで見ると、潜在性の脳虚血性病変がみられたのです。以上の成績は、米国の高血圧の雑誌にも掲載されて注目を集めました。その後、我が国では二十四時間血圧測定のABPMが盛んに使用されることになりました。