俳句・短歌 短歌 故郷 2022.04.28 歌集「星あかり」より三首 歌集 星あかり 【第103回】 上條 草雨 50代のある日気がついた。目に映るものはどれも故郷を重ねて見ていたことに。 そう思うと途端に心が軽くなり、何ものにも縛られない自由な歌が生まれてきた。 たとえ暮らす土地が東京から中国・無錫へと移り変わり、刻々と過ぎゆく時間に日々追い立てられたとしても、温かい友人と美しい自然への憧憬の気持ちを自由に歌うことは少しも変わらない。 6年間毎日感謝の念を捧げながら、詠み続けた心のスケッチ集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 グレてても真の愛の光ゆえ 真実で無く居られない我 許されて七度以上の許しゆえ 愛の最果て我も見る哉 許し合い隣人愛の許し合い 愛の極みを共にする哉
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『空に、祝ぎ歌』 【第22回】 中條 てい 「なあ、ねえちゃん。あんたここの部屋の人かい」…知り合いに泣きつかれ、裏街のチンピラから匿うことになったのだが、ある日… 去っていく車の音を聞いていたにもかかわらず、キーラはまだ真っ青な顔をして動こうとしないので、仕方なくエゴルはそばに行って座席に腰をおろした。「ニコのことをたずねていったよ」「ニコのこと?」キーラは不審そうに顔をあげ、それからふうっと体に溜めこんでいた息を一気に吐き出した。少しほっとしたのか、ようやく座席の上に身を起こしてサングラスを外す。泣いたせいか、目の下の化粧がにじんで殴られたように黒くなっ…