しかし、自分の目の前にいる学生・生徒の中で誰がモチベーションを高く維持でき、誰がそれを低下させて学びから逃避しようとしているのか? 先行研究では学生の成績評価などを追跡調査する形で明らかにしているが、成績評価で見た場合、芳しくなくなった時点でモチベーションは相当下がった状態のはずである。

ならば出席動向はどうか? 欠席が目立ち始めた時点で、モチベーション低下はかなり進行しているはずである。つまり、きっかけはどうであれ、欠席が目につく()にモチベーション低下を見極めなければならない。そして、その見極めは学生・生徒の行動を継続的に観察することでしかできない。

その意味でも、教育関係者は学生・生徒のモチベーションや、学習意欲の現状を観察(・・)する(・・)手段(・・)を持たなければならない。

その術の1つが、本章(関連記事:『講義はメモを取るべし!大学教員が語る「書く」ことの重要性』)でも指摘したシートで「書く」活動を通じて表現された文字情報なのである。前述(関連記事:『大学の教育改革「とりあえずカリキュラム変更」が無意味なワケ』)でも指摘したように、ALと学力の相互関係性が高等教育でも成り立つならば、本章で観察したシートの成果は作成した学生・生徒の学ぶ姿勢などを表すのと同時に、学力の程度も表す指標となりえる。

逆に言えば、入学段階で芳しくない学生であっても、在学中に「書く」活動のコツをつかめば、彼らの学力向上とともに、モチベーションの低下を食い止める手段になるのではないか。後の章では学生が作成したシートに書かれた文章の語彙数から、中途退学の可能性のある学生(以下、除退予備軍)を見出すことができるのかについて検討している。

モチベーションがある程度低下しきった学生の行動が中途退学として表出するだろうから、彼らの記述からその動向を見極めることは可能ではないだろうか。そういう思いでシートを観察すれば、別な視野が開けてくるかもしれない。

文字は口以上に物を言う。書かせたシートにある文字の大きさ・形・筆圧・シートのレイアウトなど、これらを見れば学生・生徒の課題に取り組む際の基本スキルが分かる。

そして、これらの変化を見れば学生・生徒のモチベーションの変化が分かる。文章で嘘はいくらでもつけるが文字は嘘をつかない。大学を含めたすべての教育関係者はこの点を肝に銘じておいた方がいいだろう。