はじめに
大学教育の現場において「書く」活動を伴う学習活動は昔から行われている。論述式の定期試験や小テスト、レポート、卒業論文がその典型である。最近ではプレゼン資料も含まれるだろう。
また、断片的だが昔から各教員が講義終わりに短い感想文などを書かせることも実践されていた。これは今日、ミニッツペーパーやコミュニケーションカード、リフレクションシートなどの名称でよばれるもので、本書で扱うシートもこの範疇に入る。受講対象となる学生・生徒により若干異なるが、私が使用するシートには、
・この講義でどんな話をしていたか?
・この講義でどこが印象に残ったか?
・この講義からイメージを膨らませてみると……?
の3つを書かせるようにしている。それと同時に、このシートは講義内容のメモを取るスペースを設けている。
いわば小レポートと板書ノートを併せ持った機能のある用紙であり、この作成を積極的に行えば、見返すだけで詳しい講義内容とその集約作業を振り返ることができる。それと同時に、講義によってはレポート作成の基礎資料にも活用できるようになっている。
以下では、実際のシート作成例を見る中で、文字が学生・生徒のかなりの情報を与えてくれることを指摘したい。
高校1年生のシート観察
最初に紹介するのは、私が2016年度にスーパー・グローバル・ハイスクール(以下、SGHと略記)に指定されたある高校のある授業で作成したシートである。用紙はB4、右側に講義の要旨などを書くスペース、左側にメモを書くスペースを配置している。この授業時間は65分で、作成したシートは翌日を期限に提出するようにした。まずAさんのシートを見てみる。
さすがに高校に入学して間もない生徒にアダム=スミスの話は難解なのは当然で、特に「今回の講義内容を何かにつなげてみよう」では悪戦苦闘している。それでも、メモに書かれたちょっとしたイラストは私にとって衝撃だったし、メモ自体も講義内容を的確につかんでいる。なお、Aさんは講義期間中のすべてにおいて図のような質の高いシートの作成ができていた。