まとめ~文字から得られる情報の重要性~

以上の調査結果は、大学入試制度の違いと入学後の学業成績などや卒業後の勤務態度などとの関連を述べたもので、本章で検討したことと観点がずれていると思われるかもしれない。

しかし、学生・生徒における(意欲などを含めた)学習に関する成熟度合いを観察する上で、興味深いポイントをこれらの結果は示している。

先行研究で明らかにされたことを踏まえると、傾向的に入試段階の学力検査(すなわち入学試験)よりも、前段階の学校環境(すなわち高校)における勉強に対する取り組み姿勢が重要である。

そこで醸成されるモチベーションや学ぼうとする意欲が持続すれば、大学入学後はもちろんのこと大学卒業後も一定以上の成果を上げる傾向にある。

一方、モチベーション自体はほんの少しのきっかけで容易に崩れ去る性質をもつ。だからたとえば、AO入試で入学したモチベーションが高い学生は他の入試制度入学者と成績面で遜色ない反面、中途退学も多いのである。

すると、高等教育に携わる者の直面する課題は、与えられた環境下で学生に対していかにモチベーションや学ぶ意欲を維持・向上させるかということになるだろう。