酸化マグネシウムと高マグネシウム(Mg)血症
③マグネシウム(Mg)の体内での作用と体内動態
Mgイオンは種々の酵素反応における活性化因子として働きます。骨にも多く存在し体内のMg量の約60%に相当します。
臨床上の効果としては血圧を下げる作用、LDLコレステロールを低下させる作用、カリウムイオンと協調して心臓のリズムを調整する作用、足の痙攣を改善する作用などが知られています。
Mgイオンは主に腎臓で排泄されますが、糸球体ろ過されたMgイオンの約90%が尿細管ヘンレ係蹄上行脚で再吸収されます。
腎機能が低下している場合はMgイオンの腎排泄が悪くなるため、血清Mg値が上がってしまいます。
高齢者になるほど腎機能が低下していきますから、血液検査をせずにカマを長期間漫然と使用すると知らないうちに血清Mg値が上昇して、①項の表1で示した悪影響が出てきます。
④カマから潤腸湯エキス剤に変更になった患者さんの話
症例検討の話題からですが、65歳女性、慢性的な便秘で長年カマを処方してもらっていた患者さんです。最近、腎機能の低下が指摘され、激しい運動は避けるようにと指示もあったそうです。血清シスタチンCは1.11mg/dL(基準値0.51~0.82)と基準値より高く、eGFRcys値は59mL/分/1.73m2と腎機能としては軽度低下レベルのようでしたが、血清Mg値が2.6mg/dLと①で示した基準値の上限をわずかに超えていました(当該医療機関の基準値では上限値ジャストでしたが)。
さらにカマの効果も最近はいまひとつなかったようで、かつ血清Mg値も高くなってきていたため、主治医が下剤をカマから漢方薬の潤腸湯エキスに変更したところ、便秘症状は改善されたようです。血清Mg値の最近の値は分かりませんでしたが、効果がいまひとつなのに漫然とカマを利用していると、高Mg血症になりかねないという症例が身近なところにも存在していたという話でした。