オルメサルタンで色が付く
これまでの話は2つ以上の薬が体の中に入ってから、互いに影響を及ぼし合う「相互作用」の話題でしたが、今回の話題は体に入る前の段階の話になりますので、本項目の趣旨とは異なるかもしれません。われわれの業界では「配合変化」と呼んでいる分野になります。ある薬局さんを訪問したとき、糖尿病治療薬のメトホルミンと高血圧治療薬のオルメサルタンを一包化※1する指示が出た処方があり、変色するから一包化できないと騒動になっていた話になります。
①オルメサルタンとメトホルミンの配合変化
オルメサルタンの先発薬「オルメテックOD錠」の添付文書を見ますと、最後5ページ目の「取り扱い上の注意」に「高温多湿条件下で本剤をメトホルミンやカモスタットと一包化するとメトホルミンやカモスタットが変色するので一包化はしないように」との記載があります。当然、ジェネリック薬でも同様の注意があり、さらに配合試験結果を公開しているメーカーさんもあります。また、2015年6月号の日経DIデジタルでは、オルメサルタン配合剤のレザルタス配合錠Ⓡとメトホルミンを一包化して変色したという監査での見落とし注意記事も掲載されていました。
②オルメサルタンの製剤的特徴
成分名はオルメサルタン・メドキソミル(図1)でエステル化合物となっています。
服用後、消化管、門脈血、肝臓において加水分解されて、活性体オルメサルタンとなって降圧作用を発揮します。一方、点線四角で囲んだ部分がメドキソミル部分で、これが開環しながら変化し途中ジアセチル(図2)という揮発性の物質が生成されると、特有のヨーグルト臭になるといわれています。この変化は体内ばかりでなく製剤の中でも少なからず起こっているため、人によってはオルメサルタン自体を不快な臭いの薬と感じられるようです。