そして、彼が野たれ死にしたのではないかと思うと、今さらのようにを惜しい男だったと思うのだった。
実のところ、Fはもともとは優秀な男で、私も彼の才能を認めていた。
島根の名門高校の実力試験で、史上最高点を取ったというのはともかくとしても、確かに、言語能力がずば抜けていて、その感覚は天才的とでも言えるようなところがあった。
Fは高校の生徒会長の高みに登り詰め、そこから大空に羽ばたいていったが、恐らくはこの世間のどこにも、自分に相応しい場所を見出せなかった。
東京の大学に進学したものの、もともと体制に順じようという気はなかったのだろう。
しばらくして経済的に行き詰まり、そこを中途退学したのだという。そして、バイトで始めたセールスの仕事に就いて、大阪と山陰を渡り歩く渡世人のような生活に入っていった。
初めは放浪のロマンを求めてやっていたのだろうが、いつしかひどい押し売りの嫌われ者になっていた。それでも旅をしてさすらうことに魅せられて、流れ者の生活を止められなかったのだろう。