薬の副作用:薬物毒性型

毒性というと怖いイメージがありますが、薬が体の組織を通過する際に起こすダメージと考えればよいでしょう。これもその性質から3つに分けられます。基本的には薬が長期間にわたり利用され徐々に臓器にダメージを与えるケースと、薬を大量に使ったために一気に臓器にダメージを与えるケースが考えられますが、通常の治療で大量投与されることはめったにないので、このタイプの副作用は薬を長期にわたり使うと起こり得ると考えてもよいでしょう。

1.物理的通過傷害

薬が臓器を通過する際に起こる接触性の傷害になります。通常、臓器では修復反応が起こり元に戻りますが、大量投与や長期投与で場合によっては修復が間に合わず傷害が残り副作用となり得ます。薬が通る機会の多い、消化器官や肝臓、腎臓、血液成分などで頻度が高くなります。

2.化学反応由来障害

体内に入った薬は異物と見なされ、体から早く排泄するように体が反応します。その代表的なものが、薬物代謝酵素による薬の水溶性化になります。代謝反応つまり化学反応を起こすと、代謝熱や代謝過程で生じる中間体の高エネルギー物質などにより周辺組織を傷害します。薬物代謝酵素の多い肝臓が標的になりやすいですが、消化器や腎臓などにも薬物代謝酵素は存在しています。

以上2つのタイプの副作用が長期投与の際に気をつけるタイプの副作用です。臓器異常を示す臨床検査値は徐々に悪化してきますので、検査値の観察がこのタイプの副作用モニターには有効です。この場合は薬の減量または薬そのものの中止等が検討されます。

3.催奇形性

これは毒性そのものと言って良いでしょう。特に妊娠2カ月は絶対過敏期と呼ばれ、薬の曝露によって奇形を生じやすい時期といわれています。このタイプの毒性は動物実験の結果として知らされます。

また古くからある薬は使用経験上からその危険性が分かります。女性に限らず男性にも避妊対策をとらせる薬もあります。毒性型としては発がん性も挙げられますが、これも動物実験レベルでの話になりますので今回は割愛します。