①気管支の自律神経支配について
前述のように気管支にはβ2受容体とムスカリン受容体(M3)が存在しているものの交感神経による直接支配はなく、副交感神経による直接支配が優位に存在しています。気管支β2受容体は、交感神経支配を受ける副腎髄質から分泌されたアドレナリンが血流に乗ってきて作用します。
②抗コリン薬の有用性抗
コリン薬というのはアセチルコリンにあらがう薬という意味で名付けられています。持続的にせきを予防するために、チオトロピウム(スピリーバⓇ)やグリコピロニウム(シーブリⓇ)といった製品が吸入薬として利用されています。気管支での神経支配では副交感神経系つまりアセチルコリンの作用が優勢ですから、抗コリン薬の方が交感神経系の薬であるβ2受容体刺激薬よりも効果が高いとされています。これが問題その1の答えになります。
③即効性の問題
COPDによってせき発作が起こったときには即効性が要求されます。抗コリン作用薬は、副交感神経から分泌されてくるアセチルコリンにまず競り勝つ必要がありますから、効果が出てくるまでに時間がかかります。一方のβ2受容体刺激薬は気管支のβ2受容体周辺に彼らを邪魔する成分がありませんから、ダイレクトに受容体に作用でき即効性が期待できるわけです。これが問題その2の答えになります。
せき発作の頓用にも利用される即効性のβ2受容体刺激作用の吸入薬には、サルブタモール(サルタノールⓇ)やプロカテロール(メプチンⓇ)などがあります。 COPDのせき発作改善にはどちらのタイプを使ってもよいことにはなっています。
④まとめ
疾患の治療ガイドラインには薬の使い分けが記載されていますが、薬の学問の薬理学と体の学問の生理学を知っておくとよく理解できる場合があります。