2)H1受容体拮抗薬とH2受容体拮抗薬の構造
前項では臓器に存在する受容体に、体が本来持っている物質が結合する代わりに強く結合したり、逆に結合を邪魔したりする薬を紹介しました。受容体に結合するには、体の中にある物質とある程度似た構造をしていないと結合しません。
薬学の分野では、薬の構造と薬の作用の関係性を表す言葉に構造活性相関という言葉があります。薬の構造と薬理作用は密接に関係しているという意味です。
ここで取り上げる薬は、ヒスタミン受容体に体内物質のヒスタミンが結合するのを邪魔する薬です。薬の世界で重要なヒスタミン受容体にはH1受容体とH2受容体の2つがあります。ヒスタミンが皮膚や粘膜にあるH1受容体に過剰に結合するとかゆみ、炎症や鼻水を引き起こします。一方、胃にあるH2受容体に過剰に結合すると、胃酸の分泌が増えて胃痛や胃潰瘍などを引き起こします。
一般に普通の反応より過剰に反応すると病気の状態になるので、H1受容体にヒスタミンが過剰に結合するのを邪魔するのがH1拮抗薬であり、様々な原因でおこる皮膚の痒みや花粉症で起こる鼻水を治してくれます。またH2受容体に結合するのを邪魔するH2拮抗薬は、胃酸過多による胃痛や消化性潰瘍を治してくれます。
今回はヒスタミンと抗ヒスタミン薬の構造でどれほどの違いがあるかを見てみましょう、という企画です。
①ヒスタミンの構造(図1)
左側の窒素Nを含む五角形の構造をイミダゾール環と呼びますが、それに2個の炭素(屈曲線部分)が並び最後にアミノ基(NH2)が付いています。これがH1とH2の2種類の受容体に結合して生理作用を発揮するのですが、これにあらがう薬はどこか共通の構造をしているはずです。
ヒスタミンの五角形(五員環)を頭、その他の3個の原子のつながりを尻尾とすると点線で示したようなオタマジャクシの形になります。そこで、いくつかの抗ヒスタミン薬の構造の中のオタマジャクシ探しをしていきましょう。