俳句・短歌 四季 2021.12.23 歌集「漣の夢」より3首 歌集 漣の夢 【第85回】 上條 草雨 中国江蘇省・無錫に留学し、その地の美麗さに心奪われた著者が詠み続けた、珠玉の短歌二一〇〇首と三九首の漢語短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 繁茂樹はんもじゆに桃源郷の思いする 楽園都市の無錫の市街 一雨ひとあめの湿った土に浮かぶ草 木きの葉も萌えてシャッキリと立つ 沿道の足下あしもとに咲く芝桜 人生照らす藤色の花
エッセイ 『一人十色』 【第2回】 イドゥルギ ヒロ,イドゥルギ ヒロ 「息子の顔が見たい」と言う妻に、私は「後でゆっくりね」と言ってしまった。だがそのあと妻は意識を失い、我が子に会えないまま… 【前回記事を読む】「至急病院に来て欲しい」妊娠した妻の病院から電話があった。病院に飛ぶと、妻は集中治療室の中で......手術を終えて我が息子と初対面した。通常なら周囲に祝福される瞬間だが、低体重児だったのですぐにNICUに回され、妻は息子の顔が見たいと微かに言っていたが、「後でゆっくり見られるから今は安静にして」と言ったのを今でも後悔している。妻はICU病室から個室に移ったが寝たきりの生活だっ…
小説 『灰色の風が吹く』 【新連載】 成澤 良喜 深夜の便所清掃中に数人の男が一人の男を一方的に殴る現場を目撃。しかし、運悪く彼らに見つかってしまい…… 深夜の薄暗い階段を上った。踊り場のすぐ目の間にある薄汚れた扉を開けた。きしんだ音がした。小さな男性用便所の蛍光灯は今日も点滅していた。右奥にある物置場から掃除用のモップとバケツを取り出し、バケツがいっぱいになるまで水を入れた。バケツの水にモップを浸し、床から拭いていく。拭くというより撫でるといった方が適切だ。この半年の間、築四十年のビルの五階にある男性用と女性用の便所で、同じ動作を繰り返してきた…