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マシンガンのように説教する先輩「さあ、つかまえたぞ」のゲーム
起こった事実
この話は、私が工場に勤務していたときのことです。
あるとき、私に、本社にいる先輩から仕事の電話が掛かってきました。その先輩は、非常に癖のある人で、部下の誰かをつかまえては、些細なことをネタにネチネチと何時間でも叱り続けるといったタイプの人でした。
さて、その電話の用件というのは、計画されているプロジェクトで、A法を選ぶか、B法を選ぶかという局面に差し掛かっており、どちらにするかという確認でした。
ただ、この選択はそんなに難しいものではなく、誰が考えてもB法が有利と思えるようなものでした。部分的にはA法にも有利な点があったのですが、プロジェクト全体を考えるとB法が優れていたのです。
そんなとき、私にその先輩から電話がかかってきたわけです。その電話の内容は、「お前はA法かB法か、どちらが良いと思っているのかを聞きたい」というものでした。
私は、その先輩に「○○という観点を考えるとA法になりますが、しかし、ここはプロジェクト全体を考えてB法を選ぶべきだと思います」と答えようとしました。
そして、「○○という観点を考えるとA法になりますが、しかし、ここはプロジェクト全体を考えて」というところまで、しゃべったときに、突如、その先輩が私の話をさえぎって、次のように、まるでマシンガンを乱射するがごとく、猛烈な勢いで、しゃべり始めたのです。
「永嶋。それはまったく違う。A法はこういう問題があるんだ。だからA法は選ぶべきではないんだ。A法にするというお前の考えは間違っているぞ。いいか、……」
そして、先輩は、まさにマシンガンのような勢いで、私に話をさせる余裕を一切与えず、一方的に実に30分以上話し続けたのです。
30分というのは誇張ではありません。そのとき、私の机の正面の壁に大きな時計がかけてあり、私はその時計を見ながら電話で話していたのですから。
また、マシンガンというのも決して誇張ではなく、その先輩は私に話す余裕を一切与えず、しゃべり続けたのです。その間、私の電話の応答は次のようなものでした。
「……はい。はい。……ですから、私もB法が良いと……はい。その通りです。……だから、B法が良いと私も考えています……いえ、A法が良いと言っているのではなくて……あの、少し、話を聞いていただけませんか……はあ……はあ……だから、私もB法が……いえ、同じことを言っているのですよ……あの、少し、私にも話をさせていただけませんか……ですから、私もB法が良いと……いえ、A法が良いのではないのですよ……私もB法が……」
この私の電話のやり取りから、おわかりいただけると思いますが、先輩は、私がA法が良いと言っているという前提に立って延々と30分以上しゃべり続けたのです。
途中、私が「私もB法に賛成です」とか、「少し、しゃべらせてください」と言っても、一向に話すのをやめませんでした。そもそも、私は「○○という観点を考えるとA法になりますが、しかし、ここはプロジェクト全体を考えて」という言い方で話を始めています。逆説の接続詞の「しかし」が入っているわけですから、後に続く文は「B法が良いと思います」に決まっています。
しかし、先輩は、マシンガンのように話を続けて、最後は「……とにかく、お前の言うA法はダメだからな」と言って、一方的に電話を切ってしまいました。