【関連記事】JALの機内で“ありがとう”という日本人はまずいない

どのように解決したらよいのか

さて、このゲームは一体どのように考えればいいのでしょうか? その先輩の電話の最終目的が「工場の永嶋はA法が良いと言っている。あいつは、バカだ」と本社で言いふらして、私の価値を下げることにあったのは間違いないでしょう。そして、その「証拠」を得るために私に電話をして、30分以上一方的にしゃべり続けることで「私がA法に賛成であるという事実」を無理やりつくり上げたことも間違いないでしょう。

しかし、わからないのは、その先輩は入社時代からよく知っている人で、私と特にトラブルもなかったという点です。そのため、先輩がなぜ突然私を攻撃したのかが私にはさっぱりわかりませんでした。また、後日談についても、前述しましたように、私にはまったく理由がわかりませんでした。これは一体、どんなゲームなのでしょうか?

実は、その先輩は、私に「さあ、つかまえたぞ」というゲームを仕掛けてきていたのです。このゲームは、会社や組織のなかでは、特定の人間に焦点を当てて、相手のミスや弱いところにつけこんで、揚げ足を取ったり、ガミガミと集中攻撃をするといった形で、非常によく行われるのです。

このゲームの目的は、部下や後輩といった自分より立場が弱い人に対して、集中攻撃をすることで、自分の自信のなさを隠し、自分の弱点を見せないことにあります。XX先輩が私をターゲットにしたのは、想像ですが「私が常に先輩といった年長者を立てるように振る舞うので、攻撃しても自分に対し遠慮して反撃をしてこない」と思ったからではないでしょうか。

「さあ、つかまえたぞ」というゲームを仕掛ける人間は、常に自分の獲物になる人物を物色しています。例えば、上司と部下の場合ですと、上司がいくら攻撃しても反撃しない部下を選んで、その部下一人だけを徹底的に攻撃するのです。前述の「イエス・バット」のゲームは「相手の言うことに何でも反対する」というやり方で相手を攻撃するものですが、このゲームは「相手にしゃべらせず、一方的に相手を叱りつける」といった攻撃方法を取ることが多いのです。

また、課長といった部署長が、課のメンバーもその攻撃に参加させて、自分のみならず、課全体で特定の部下を攻撃するといったケースもあります。つまり、課の全員がその人物を攻撃しているという状況をつくり上げることで、その課長は自分だけがその人物を攻撃しているという「負い目」を感じなくてもよいように仕向けるわけです。そして、その部下が転勤などでいなくなると、今度は新たな獲物を探し出し、その人物に対して、同じように執拗な攻撃やイジメを加えるのです。

私の事例で言うと、XX先輩から見て、いくら攻撃しても決して反撃してこない私は、彼にとって格好の獲物だったわけです。そして、XX先輩の自分に対する自信のなさも、このゲームが行われる原因なのです。つまり、相手を攻撃することで、自分の持っている「自信がない」という気持ちを隠してしまえるのです。

XX先輩が、自分の何に対して自信が持てないのか知る由もありませんが、私を執拗に攻撃する、しかも私と会うときは普通に振る舞っているが、陰では10年にもわたって悪口を言い続けるという極めて陰湿な攻撃を繰り返していたということは、それだけ先輩が自分に自信が持てないという感情を持っていて、私を攻撃することでその感情をカバーしていたことに他ならないのです。