私は、30分以上の長電話で心身ともにすっかりくたびれ果ててしまい、もう一度、その先輩に電話で話をする気力もなくしていました。ただ、もう一度電話したとしても、再び同じことが繰り返されただけでしょう。そして、それから少し経ったときのことです。本社から工場に出張でやってきた人が、私にこう言ったのです。
「XX君(その先輩の名です)が『工場の永嶋はA法が良いと言っている。あいつはバカだ』と本社で言いふらしているよ。ところで、永嶋君、君はなぜA法が良いと思うんだね?」
私は、さすがにばかばかしくなって、その人には簡単にいきさつだけを話しました。そして、私がその件でもうその先輩と話すことはありませんでした。
しかし、30分以上にわたり相手のマシンガンのような話を、それも意図して私の考えを曲げようとする話を、休みなく聞かされたのは大変な苦痛であり、私は大きなストレスを受けたのです。
実は、この話には、後日談があります。
そのあと、そのXX先輩とは何回も顔を合わせましたが、幸いにも同じ職場になることもなく、仕事を一緒にすることもなく、私は電話事件のようなことを再体験することはありませんでした。
さて、その話からもう10年は経ったときのことでしょうか? 私は、後輩社員の一人からある相談に乗ってくれませんかというメールをもらいました。
さっそく、仕事が終わってから、彼と一杯飲みに行き、話を聞きました。彼の相談の内容はこの話には関係がありませんので省略します。
そして、相談が一段落ついて、後輩と雑談していたときでした。彼がこんなことを言い出したのです。
「実は、前から不思議に思っていたんですよ。永嶋さんとXXさんのあいだに、一体何があったんですか? XXさんは、事あるごとに、いろんな人に『永嶋には管理能力がない』とか『永嶋は最低だ』とか、永嶋さんの悪口を言いまくっていますよ。私から見て、永嶋さんに能力がないとは、とても思えませんので、あれはXXさんが永嶋さんを悪く言っているだけだと思うのですが、一体二人のあいだに何があったのですか?」
私は、この話を聞いて仰天しました。 そのXX先輩とは、例の電話事件以来、何度も顔を合わせていましたが、普通に会話を交わしており、彼からはそのような悪口は出ませんでした。毎年、年賀状も出していました。
このように、XX先輩とはごく普通に接しており、仕事での接点もなかったので、私には悪口を言われるような覚えはまったくありません。
しかし、後輩の話ではXX先輩は、どうも電話事件以来10年間にわたり、陰で私の悪口を言い続けてきたようなのです。私にはどうしても、そのXX先輩の攻撃の理由がわかりませんでした。
しかし、10年も陰で悪口を言い続ける陰湿さを考えると、大きなストレスが頭や肩にのしかかってくるような、重苦しい圧力を感じたのでした。これが私のストレス体験です。