小説 『火点し時』 【新連載】 順菜 月に3回、同僚とホテルへ行く習慣ができた。職場の飲み会の帰りにそういう流れになって、恋人はいたけど止められなかった。 優人は仕事帰り、いつものように彼女のアパートに寄った。今夜も静子の帰りは遅い。優人はコンビニで買ってきた缶ビールとそば、するめをつまみながらしばらくテレビを観ると、風呂を済ませてからベッドに入った。十一時過ぎ、家主が帰ってきた。「お帰り」「来てたの……」静子は疲れているようだった。「風呂、追い焚きすればすぐだと思うよ。そんな冷めてないから」「うん、じゃあ入る」静子は言葉少なに風呂へ消えた。飲食店…
小説 『僕が奪ったきみの時間は』 【第26回】 小西 一誠 彼は車内で絶望した――元カノの家が近くなるほど心臓が脈打ち、これから訪れる現実を想像すると、吐き気がしてきて…… 【前回の記事を読む】「いつ地元戻るの?」と何度も催促してくる彼女…来週の水曜日に“決行日”を決めると、やたら褒められ……また朝早くから僕は支度をして出発した。前日、明里さんから一緒に行こうかと誘いのメッセージが届いたが、さすがにそれは申し訳ないと断った。向こうで、僕がどんな結末を迎えるのかわからないが、ひどくショックを受けて泣き崩れるかもしれない。そんな姿は恥ずかしくて見せられないというのが七割…