小説 『泥の中で咲け[文庫改訂版](注目連載ピックアップ)』 【第21回】 松谷 美善 遺体になって初めて見た、母の足の指はひどく曲がっていた…その理由は、1日3万歩近く歩き、一軒一軒住宅地を訪問して… 【前回記事を読む】男の患者は、男性看護師が担当するルールらしい…ナースコールで貰った水が『冷たくない』と伝えると、男性看護師は…母の会社の人に聞いた話だが、一日三万歩近くも歩き、住宅地を一軒一軒訪問して、ガス器具を売り歩いていた。遺体になって初めて見た、母の足先はひどい外反母趾になっていた。些細な理由で高校に行かなくなり、毎日怠惰な生活を送っていた私を、母はどんな思いで見ていただろう。母は本当に…
小説 『僕が奪ったきみの時間は』 【第33回】 小西 一誠 「あの子は自分が死ぬことをわかって、子供を生んだのよ」彼女の母が差し出した1通の手紙に、出産を決めた理由が…… 【前回の記事を読む】会えると信じていた彼女は、仏壇の中で笑っていた――その母が泣き崩れながら告げた“子供”の存在とは……「それでいいの。遥香は自分が死ぬことをわかって、子供を生んだのよ」「死ぬことを、わかってた?」「そうよ。あの子は昔から身体が弱くてね、よく学校を休むこともあったの」遥香の貧血は知っていた。ただそこまで身体が弱いのだと思ったことはなかった。「妊娠がわかって、由紀子がおろそうって言…