小説 『記憶のなかで生きる』 【第16回】 厚切りゆかり 「3日も熱が続くのはおかしい」と母を病院へ連れて行くと…病名を聞き、「入院が必要」頭が真っ白になった。 【前回記事を読む】家のトイレがわからない母のために、家中のドアに紙を貼った。『トイレ』、『台所』、『お母さんの部屋』その年の冬は、例年より寒かった。母は寒さに弱くなったのか、こたつから離れようとしなくなった。「お母さん、少しは動いたほうがいいよ」「だって、寒いんだもの」「じゃあ、こたつの中で足踏み運動しよう」私は母と一緒に、こたつに入ったまま足を動かす運動をした。テレビの体操番組を見ながら、二人…
小説 『八事の町にもやさしい雪は降るのだ[人気連載ピックアップ]』 【第8回】 宮野入 羅針 新人教育を任された女性は、僕が殺した男の“娘”だった…積極的に仕事を覚え、笑顔でメモを取る彼女に僕は、恐怖を感じ…… 【前回の記事を読む】兄のバイクを無免許で走らせた親友は、歩道から飛び出した人影を避けようと、反対車線に飛び出し――通夜の後、僕は犯した罪に蝕まれ…新人教育は僕の仕事だ。仕事の流れを教えなくてはいけない。沙耶伽は控え目ではあるが周りに気を配る笑顔を絶やさず、僕の言うことをメモに取りながら、積極的に仕事を覚えていった。彼女の働きぶりを見ると芽衣おばさんを思い出す。顔も同じ瓜実顔(うりざねがお)で、大…