小説 『信長様と猿』 【第5回】 ヤマダ ハジメ 内通者をあえて泳がせる――書簡を何通か並べた信長は、笑いながら藤吉郎に問うた。「猿、この書状、どれが本物かわかるか?…」 儂は、草履取りの雑用係から日頃の忠義と実績が認められ武士の足軽に取り立てられた後、桶狭間の合戦に於いては、足軽組頭として出陣していたな。その頃の信長様との会話を想い出すとこんな秘話があったわ。「殿、桶狭間の戦ですが、拙者も組頭として参加しておりました。勝てる相手とは思えないほど兵の差がありもうした。確か今川勢1万2000に対し織田勢はわずか3000あまり。どうして勝てたのか、未だにわかりません。…
小説 『居場所がない団塊世代のあなた方に』 【最終回】 阿弥 阿礼 「いちばんかわいそうなのは父なんだ」戦争で別人のようになった父。少年は夜ごと、声を殺して泣いた 【前回の記事を読む】父に酒が入ると、家の空気は一変…深夜、大声で得体の知れないうわごとを叫ぶように……母と私は、理由も分からず耳を塞ぐしかなかった高岡は言った。「父の振る舞いが悲しくて涙がこぼれてくるんだ。でも、泣きたくても、夜だから声を出すわけにもいかなくて……。夜空を見上げると、星々は、闇に無数に輝いている。赤や黄色、それにオレンジ色の星もあるし、冷たい白く光を放つ星もある。星々は北極星を中…