小説 『火点し時』 【新連載】 順菜 月に3回、同僚とホテルへ行く習慣ができた。職場の飲み会の帰りにそういう流れになって、恋人はいたけど止められなかった。 優人は仕事帰り、いつものように彼女のアパートに寄った。今夜も静子の帰りは遅い。優人はコンビニで買ってきた缶ビールとそば、するめをつまみながらしばらくテレビを観ると、風呂を済ませてからベッドに入った。十一時過ぎ、家主が帰ってきた。「お帰り」「来てたの……」静子は疲れているようだった。「風呂、追い焚きすればすぐだと思うよ。そんな冷めてないから」「うん、じゃあ入る」静子は言葉少なに風呂へ消えた。飲食店…
小説 『訳アリな私でも、愛してくれますか』 【第51回】 十束 千鶴 髪を優しく撫でられ、抱き寄せられた。彼の匂いに包まれながら頷くと、口づけをされて…触れられたところから愛しさが溢れた。 【前回の記事を読む】「だめ、近づかないで」すっぴんを隠そうとしたのに、彼に引き寄せられ…言葉ごと唇をふさがれて――「ちょっと京弥さん、水瀬さんに笑われてるんですけど」「笑われてるのは礼君の方だと思うよ?」「誰のせいだと思ってんの……」ふてくされた顔で文句を言う礼。「ごめんごめん、なんか吉川君、変わったなぁと思って」「そうですか?」「うん、ここ1ヶ月くらい業務連絡以外であんまり話せてなかったけど、…