エッセイ 『治すより、付き合う』 【第2回】 弓庭 柔悟 「腎臓の組織を少し取ります」背中にチクッと針がさされ麻酔が打たれたと思ったら、「バチン」と銃みたいな音が… 【前回の記事を読む】むくみ、体重増加、尿量減少――気のせいかと思ったが、母に言われるまま病院へ行くと医師の口から…スマホで「急性腎不全」を検索する。やってはいけない行為ランキング第1位を、入院初日に達成した。怖い言葉ばかり並んでいた。【合併症】【不可逆】【慢性化】【透析移行率】そっと画面を消した。天井を見た。白かった。その白さが、やけに遠く感じた。午前2時。隣の“むくみ村の村長”が突然言った。「…
小説 『who am I』 【第14回】 千戸 嶺 メイク室で2人きりになると、彼女は鏡越しに言った。「私のこと、覚えていますか?」…その名前を聞いた瞬間—— 【前回の記事を読む】詳細は書けないが警察沙汰になりかけた。母の表情は憎悪、愛情、恐怖が混ざっていて、もはや人間の顔ではなく……私が促されるまま席に着くと、岩塚玲子が言った。「少し、席を外してもらえますか?」周囲のスタッフに向けた言葉だった。声のトーンは変わらなかった。穏やかで、一定で、でも有無を言わせない何かがあった。ほどなくしてスタッフが出ていった。ドアが閉まった。メイク室に岩塚玲子と私だけが…