大阪市中央児童相談所のこと

大学卒業後、ケースワークを専門として働きたいと思っていた私には、当時の社会のなかではもっともふさわしいと考えられる児童相談所・児童福祉司の職に運よく就職することができ、三年目には結婚もすることができました。

現在の児童相談所は虐待関連のケースが大幅に増え大変な職場になっていますが、当時(約四五年前)も相当に困難な職場でした。私は、多くの読書によって得た人間的な力と、大学で学んだケースワークの理論を支えとしてなんとか仕事を続けていました。

地区担当児童福祉司として二年目からは比較的大きな区を担当し、大阪市を退職するまでの間に、大学新卒の児童福祉司と、次々とペアで仕事をしました。私が在職した八年四か月の間、大阪市中央児童相談所の所長は林脩三先生でした。

林先生は、大阪市の民生局の幹部から請われて京都少年鑑別所所長から大阪市中央児童相談所の所長になられた人でした。当時の職場の雰囲気は厳しいけれども暖かいものがありました。ケース・カンファレンスは、なぜそのような判断をしたのかを問われるもので、こちらの人間性、生きかたを意識させられるものでした。

林先生は、精神科医でもあり、人間に対する深い洞察力を感じるとともに、岡村先生の福祉理論をもよく理解しておられることを感じさせられたこともしばしばでした。岡村先生とは個人的にも互いに敬愛の念を持ってつきあっておられたように思います。