安心

保育園では“安心して働ける”という言いかたが保護者の方から、また園の側からは“安心して働いてもらう”“安心してまかせてもらう”というような言いかたがよくされます。

これらの“言いかた”が意味している内容については、保育園の担っている社会的機能としては基本的なものであって、保育園としては、保護者のかたに安心して働いてもらうために、事故がないように、そして健康面・栄養面において一定の配慮がなされるとともに、ともだちや担任の先生との関係がよい状態であるように、園を運営していかなければならないことはいうまでもありません。

しかし、これらの「安心」は大人の側から見たもののように思えます。「わかばの保育」における「安心」は、もう一歩ふみこんで一人ひとりの子どもに身を寄せて、子どもが一人の人間としてよりよく生きて順調に成長し発達するためには、安心して過ごせるということが何より大切だと考えているのです。

子どもたちが毎日生活する場としての園の保育室だけではなく、園全体がどのような雰囲気なのかが問題なのです。

保育園を始める前の約一〇年間、大阪市中央児童相談所で児童福祉司として児童相談の仕事に従事しましたが、相談の仕事を進めるために中学校や小学校そして公立保育所などをよく訪問しました。

そのとき、学校なり保育所の場に実際に身を置いたとき、よく感じたのは、大きくて人が多いということもありますが、全体的にまとまりがなくばらばらであって、ときにはとげとげしかったり冷たかったりする雰囲気でした。これでは子どもたちは、落ち着けないし、のびのびできないだろうと感じたものです。

また、自分自身のこれまでの現実の人生体験や、人間とは何か、自分はこの世でどのように生きたらよいのか、を考えるために宗教や哲学・心理学などの分野から得たものからも、人間として、よく生き、健全な自己実現を現実のものにするには「安心」は大切であることを知りました。