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子は親を知らない、分かっていない
都市に人が吸い込まれ核家族化したことで、親子の会話の機会は減り、相互の理解はかなり低下しました。
離れて暮らしており、帰省するのは正月やお盆くらいでは親の実態はなかなか分かりません。里帰りをしたときには、「せっかく帰ってきたのだから」と食べて飲んで終わりで、親の老後や最期といった込み入った話はできません。
親子が互いに想いを持っているのに、その話をしないままに時が過ぎてしまいます。
私も父の死後、「父親のことを何も知らなかった」「もっと話をしておけばよかった」と後悔しました。
歳をとり、徐々に自分の中に父親に似ているような部分があるように感じてきていたので(それは私にとって好ましいことではありませんでしたが)、ルーツとしての父親の話をなぜもっと深く聞いておかなかったのかと思いました。
よく酒を酌み交わしていたのですが、振り返ってみれば、核心に触れるような話は何となく照れくささがあって避けていました。
先日、一戸建ての持ち家を売って住み替えたいと言う高齢男性にお会いしました。その理由を尋ねると、
「妻との思い出がたくさんある家にいると、毎日、悲しみが湧いてきてつらい。気持ちを切り替えるために違うところに住みたい」
とおっしゃいました。そして東京にお住いのお子さんには「庭の掃除が大変だから引っ越すことにした」とだけ言っているそうです。
私とは少し違いますが、ここにも親のことを知らない子どもがいるということです。親子の対話による相互理解の前に、そもそも高齢者と次世代では高齢期に対する認識のギャップがかなりあります。
表は、「老いの工学研究所」で、「高齢期に心配なこと、恐れを感じるもの」について調査した結果です。
六五歳以上:一〇二人、六五歳未満:一四四人に、二〇項目の中から複数回答可で選んでもらったところ、高齢者と次世代では、高齢期に対する認識が大きく異なっていることが分かりました。
「高齢期に心配なこと、恐れを感じるもの」について、「身体能力の衰え」「認知症」「家の周辺環境」「大きな病気やケガ」は、六五歳未満も六五歳以上も共通して上位に挙げています。