職場は私を守らない(新卒社会人の生活)

大学生活を通じて、ナルコレプシーを個性と捉えられるようになった私は、地元の公立病院に就職し理学療法士として働き始めました。

一つの壁を乗り越えた私は、新しい環境でのスタートに「担当する患者さんに希望を持っていただきたい」「担当患者さんを支える存在になりたい」といった思いを巡らせていました。

しかし、現実は違いました。

「私にしかできないことがある」と意気込んでいた私でしたが、職場の方々にご配慮いただかないとナルコレプシーをコントロールできず、人並みにすら働けないという現実に気づいてしまうのでした。

考え方がポジティブになったところで、「ナルコレプシーを抱えている川崎は寝てしまう」という現実は変わることはありません。

先輩職員からも病気の有無なんて関係なく、働くからには他の職員と同じように働くことを求められる、といった話をされました。

また、寝ているのはサボっているのと同じだと言われることも多々ありました。

入職当初は、理学療法士を目指した理由でも述べたように、医療職だから他の職と比較して周囲の方も理解してくれるだろうと、勝手に期待してしまっている自分がいました。

一つの壁を乗り越えたと思っていた矢先、新たな壁が目の前に現れたのでした。

少し話は()れますが、当時の私なりのナルコレプシーのコントロールについて説明します。

あくまで私の場合ですが、毎朝モディオダールという薬を二錠服用しています。対症療法ではありますが、服薬することで、突然眠りに落ちることはなくなります。しかし、眠気が無くなるわけではなく、我慢のできない眠気は襲ってきます。

そのため、二~三時間おきに五~二十分ほどの仮眠を取らなければコントロールできません。このような工夫で、寝てはいけない場面で突然寝てしまわないように、上手くコントロールしてナルコレプシーと付き合ってきました。

もちろん職場に病気のことは面接の時点で伝えてあり、病院側も承知の上での採用でした。しかし、リハビリテーション科の先輩からは理解を示してもらえることはなく、理不尽な対応を取られることが日常的にありました。

当然、私自身も配慮・協力していただけるように、日頃からの生活習慣には気をつけていて、規則正しい生活を送っていました。

しかし仮眠などの対応は許してもらえることはありませんでした。

そんなこともあって、眠そうにしている私を見ては、声をかけることなく上司に告げ口されたり、

「昨日どうせ夜更かししたんだろ」

などと日々言われていました。眠そうにしている私を見て

「そういった姿勢は上司の配慮に対する裏切りだ」

とも言われたこともあります。

仕事面でも少しでも腕を上げようと、休日返上でスキルアップのための勉強会にも積極的に参加しました。

しかし、病気を理由に担当患者数を極端に減らされ、始業から二時間で一日に行う全ての業務を終えてしまう時期もありました。

中でも一番衝撃だったことが、昼休み中の仮眠についての対応です。