俳句・短歌 短歌 2021.10.18 短歌集「蒼龍の如く」より三首 短歌集 蒼龍の如く 【第18回】 泉 朝雄 生涯にわたって詠み続けた心震わすの命の歌。 満州からの引き揚げ、太平洋戦争、広島の原爆……。 厳しいあの時代を生き抜いた著者が 混沌とした世の中で過ごす私たちに伝える魂の叫び。 投下されしは新型爆弾被害不明とのみ声なくひしめく中に聞きをり 伝へ伝へて広島全滅の様知りぬ遮蔽して貨車報告書きゐし 擔架かつぐ者も顔より皮膚が垂れ灼けただれし兵らが貨車に乗り行く 新聞紙の束ひろげてホームに眠る中すでに屍となりしも交る 息あるは皆表情なく横たはり幾日経てなほ煤降るホーム (本文より) この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 雨上りし赤萌え山の谷沿ひの 櫟くぬぎの芽吹きはすがしかりけり うすうすと日かげかぎろひ遠山の 襞ひだのかげりも見えずなりたり 月照れる窓に垂れたるくるみの葉 ベッドの上にさやかに映る
エッセイ 『プリン騒動[人気連載ピックアップ]』 【新連載】 風間 恵子 「そんなプリンなんか作ってないで、早くメシのしたくしろ!」台所で一挙手一投足に怒り狂う義父。言葉の暴力が鉛となって心臓を突き抜けた。 ある晩のことだった。三人で、夕食のしたくをしていた。この三人と言うのは、舅(しゅうと)・姑(しゅうとめ)・嫁すなわち、私の事である。台所は女の神聖な場所と考えられているのではないか。しかし、この家では、舅が当たり前のように立つことが多い。自分が調理したものは自慢をするが、人の作った料理は決して、美味しいとは言わない。逆に貶す事に喜びを感じるタイプである。野菜の切り方から、味つけまでを一つ一つ指摘…
小説 『雲海のエガミ』 【最終回】 こた 「その子を置いていけ」彼女は這いながら叫んだが、海賊は既に見えなくなっていた。やがて彼女は腕の中で動かなくなり… 海賊は笑いながら自分達の剣を抜き、三人の内の一人の海賊がチナンに向かって行くと、あっさりとチナンに首を切られ倒れる。残った二人の海賊は顔を見合わせ、肩に背負っていた意識のないアッカトを地面に降ろし、眼つきを変え、構えを替えた。「ラ・エンカ走れ!」チナンは、そう指示を出した。その直後、海賊の二人は同時にチナンに向かって行く、チナンは防御と攻撃を繰り返し、一人に胴体に深手の傷を負わせ倒すが、もう一人…