俳句・短歌 短歌 2021.08.16 短歌集「蒼龍の如く」より三首 短歌集 蒼龍の如く 【第1回】 泉 朝雄 生涯にわたって詠み続けた心震わすの命の歌。 満州からの引き揚げ、太平洋戦争、広島の原爆……。 厳しいあの時代を生き抜いた著者が 混沌とした世の中で過ごす私たちに伝える魂の叫び。 投下されしは新型爆弾被害不明とのみ声なくひしめく中に聞きをり 伝へ伝へて広島全滅の様知りぬ遮蔽して貨車報告書きゐし 擔架かつぐ者も顔より皮膚が垂れ灼けただれし兵らが貨車に乗り行く 新聞紙の束ひろげてホームに眠る中すでに屍となりしも交る 息あるは皆表情なく横たはり幾日経てなほ煤降るホーム (本文より) この記事の連載一覧 次回の記事へ 最新 風邪だにも一つ病まずといつはりて母へ手紙を書くが悲しき 風吹きて雨垂れの音とだへれば庭の叢に虫の鳴きをり 夏の朝遠き家族うからら思ひをり皿に盛りたるトマトたべつつ
小説 『アイアムハウス』 【第8回】 由野 寿和 「助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて!」オンラインゲームの最中に背後から襲われた長男 次に深瀬はパソコンのディスプレイに目をやった。デスクトップパソコンは本体が光っており、画面にはいくつものウィンドウが表示されている。「この画面は犯行当時のままか?」「そのようです」「俺にはわからんが、何の表示だ?」「これはCHAO(チャオ)とかいう、人気のオンラインゲームだそうです。オンライン上でチャットをしながら戦うサバイバルゲームで、世界中でプレイされています。どうやら世界大会も開催されてい…
小説 『鼠たちのカクメイ』 【第6回】 横山 由貴男 「拙者を捕らえれば、お主の上司も泥をかぶる…今から覚悟をしておけ」不正した役人の言葉。腐敗は幕閣まで浸透している…? 善右衛門は恭しく跡部に酌をしながら、お知恵を拝借、と遜る。「俺が袖にしたからお主の所に参ったか、あの偽善者め。無論、断れ!」「せやけど、江戸より赴任されたばかりの跡部様はご存じおまへんやろが、大塩様はここ大坂では絶大な人気をお持ちの正義漢ですわ。厄介なことにならしまへんやろか」ここで大塩平八郎の与力時代に触れよう。そもそも与力とは、奉行というキャリアからの直接指揮と幕府からの報酬を受ける身分。職…