俳句・短歌 短歌 2021.08.16 短歌集「蒼龍の如く」より三首 短歌集 蒼龍の如く 【第1回】 泉 朝雄 生涯にわたって詠み続けた心震わすの命の歌。 満州からの引き揚げ、太平洋戦争、広島の原爆……。 厳しいあの時代を生き抜いた著者が 混沌とした世の中で過ごす私たちに伝える魂の叫び。 投下されしは新型爆弾被害不明とのみ声なくひしめく中に聞きをり 伝へ伝へて広島全滅の様知りぬ遮蔽して貨車報告書きゐし 擔架かつぐ者も顔より皮膚が垂れ灼けただれし兵らが貨車に乗り行く 新聞紙の束ひろげてホームに眠る中すでに屍となりしも交る 息あるは皆表情なく横たはり幾日経てなほ煤降るホーム (本文より) この記事の連載一覧 次回の記事へ 最新 風邪だにも一つ病まずといつはりて母へ手紙を書くが悲しき 風吹きて雨垂れの音とだへれば庭の叢に虫の鳴きをり 夏の朝遠き家族うからら思ひをり皿に盛りたるトマトたべつつ
エッセイ 『プリン騒動[人気連載ピックアップ]』 【新連載】 風間 恵子 「そんなプリンなんか作ってないで、早くメシのしたくしろ!」台所で一挙手一投足に怒り狂う義父。言葉の暴力が鉛となって心臓を突き抜けた。 ある晩のことだった。三人で、夕食のしたくをしていた。この三人と言うのは、舅(しゅうと)・姑(しゅうとめ)・嫁すなわち、私の事である。台所は女の神聖な場所と考えられているのではないか。しかし、この家では、舅が当たり前のように立つことが多い。自分が調理したものは自慢をするが、人の作った料理は決して、美味しいとは言わない。逆に貶す事に喜びを感じるタイプである。野菜の切り方から、味つけまでを一つ一つ指摘…
小説 『普通の男、浩狙われる!』 【第10回】 上山 照 「リュックに小さい穴が空いていますよ。お気を付けください」一体何の穴だろう? 見ると何か転がり落ちてきた…ピストルの弾だ! 中央通りを通って日本橋を過ぎ、日本橋四井タワーの角を曲がり、グリーングラスホテルの車寄せに着くと直ぐドアマンが寄って来て、タクシーのドアを開けてくれた。こじんまりしたホールへ入ると、ボーイが、「田賀様でいらっしゃいますか?」と聞いてきたので、「そうです」と答えた。「お荷物をお持ち致します」と言って、背負っていたリュックを示したので、下ろして手渡し、身軽になったことで少しホッとした。そのままそばの…