俳句・短歌 短歌 2022.07.08 短歌集「蒼龍の如く」より三首 短歌集 蒼龍の如く 【第71回】 泉 朝雄 生涯にわたって詠み続けた心震わすの命の歌。 満州からの引き揚げ、太平洋戦争、広島の原爆……。 厳しいあの時代を生き抜いた著者が 混沌とした世の中で過ごす私たちに伝える魂の叫び。 投下されしは新型爆弾被害不明とのみ声なくひしめく中に聞きをり 伝へ伝へて広島全滅の様知りぬ遮蔽して貨車報告書きゐし 擔架かつぐ者も顔より皮膚が垂れ灼けただれし兵らが貨車に乗り行く 新聞紙の束ひろげてホームに眠る中すでに屍となりしも交る 息あるは皆表情なく横たはり幾日経てなほ煤降るホーム (本文より) この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 必墜の思ひの外に思ひなく弾つきしかばあたりて砕きぬ 大君が撃うてと宣のらせば奮ひ立つ民の一人の吾も奮ひ立つ 大みことのり下し給へる畏かしこさを今日新あらたにしいよいよ励まむ
小説 『お嬢様の崩壊』 【第6回】 いけだ えいこ ある日仕事帰りに夫が倒れて救急車で運ばれたと勤務する銀行から電話が!吐きそうになるのをこらえながら… 「いらっしゃいませ」と思い切って声を出すと、先輩社員の治子から「だめよ」と怒られる。「もっと声を張らないと聞こえないわよ」と何度も注意された。徐々に慣れてきたがスムーズに接客ができるようになるまで何週間もかかった。治子は感じの悪い女性だった。しずかより十歳以上年下なのに、まるで赤ちゃんをあやすように、仕事を教えようとする。その慇懃無礼(いんぎんぶれい)な態度が腹立たしかった。自分のほうがいろいろ…
小説 『ザ・総選挙[注目記事ピックアップ]』 【新連載】 利根川 尊徳 私達ならではのお仕置きを企ててみたのですが......新党を立ち上げ、政権ジャックを目指す。 「武藤さん、この数字は何かな?……」と資料に目を落とした山脇が訊ねると、「ああ、二八という数字ですか? それは我々がこの国のシンクタンクとして、政府に提言した件に対して、曲がりなりにも何等かの検討らしき事が行われた数字で、八〇八という数字は我々が魂を込めて行った提言をダイレクトメールを開封さえしないで、恰もごみ箱に捨てる様に扱われた提言の数です」と武藤亜希子が苦々しげに答えてみせた。「この国の政…