だったら今はやりの西野カナの「会いたくて会いたくて」なら知ってるよねと次は西野カナを予約した。やっと番がきた。「エッ何、この会いたくて会いたくてって? 又、わけわかんない、今はキャンディーズメドレーでのってるところでしょ!」と又、消去されてしまった。

結局そのあと酔っぱらったおばちゃん達は誰一人私に「いとしのエリー」さえも歌えと言わなくなりお開きの時間……。私はほぼ三時間聞きたくもない曲をバックに冷えたピザやポテトをコーラで流し込み、彼女らの美声? に悶絶していた。

帰りがけに一人のおばちゃんに、「あ〜今日は楽しかった〜! ○○さんの「いとしのエリー」サイコーだったよ!」と楽しそうに言われたが、「私は一曲も歌っていない!!」そう叫びたいのをがまんして私は帰路についたのだ。

猫の松方君

うちの店が現在の地に移ってから三十年近くたつ。近くに公園があり、初めの頃はのら猫の多さにとまどった。ワンルームが多いので学生さんや一人暮らしの人がさびしさで猫を飼っていて、卒業と同時に公園に捨てて行く、と古くからの住人に聞いてあきれたが、根っからの動物好きの旦那と私! ほっとくわけにもいかずエサをあげるかわりに、これ以上増やしてはいけないと捕獲して去勢や避妊(ひにん)する事にした。

この三十年でかれこれ数十匹は地域のボランティアさんに協力してもらい、わなをしかけ、じっくりわなにかかるのを待ち、わなにかかると病院に連れて行き、手術してもらい、又そこに放つ。もちろんお金もかかる。でもそれ以上にこの捕獲をする時間と労力が半端なく大変だった。

初めの頃はけっこう嫌がらせもされた。わなにかかりニャーニャー泣いている猫を見た人に、「あんた、猫殺してどうすんの!!」としかられたり、「三味線にでもすんのかよ!!」と酔っぱらいにからまれたり、何でこんな場所で商売なんか始めたんだろう、とこんなおばちゃんでも、さすがにうつになりそうな時もあった。でも今は周りの人もわかってくれたようで、猫好きの人もけっこういて、のら猫の数もへっている。