はじめに

ず〜っと解けない謎がある。

人類がどんなに未知の物を解明したとしても、これだけは決して解く事はできない謎がある。

私「ねえ又うなってたよ。だから少し量をへらせって言ってんじゃん」

ベッドに横になりイヤホーンを耳につけ両手を天井にふりかざし、ときおりリズムをとるように体を揺さぶり、一身にう〜んう〜んとうなっている珍獣のイヤホーンを私は思いっきり引っこぬく。

珍獣「エッなに! 今マーリンルージュでかっこつけて〜ってとこだったのに〜」

びっくりして飛び起きた珍獣に、いつものように私の罵声が部屋中に鳴り響く。

私「 ハッ! 秘密のデートかい! あんたはサザンの曲を歌ってるつもりだろうけど、ただの死にぞこないの老人のうめき声なんだよ。何回も言うけど、うちは安普請なの! 窓のそばでうん、うんうなってたら、近所めいわくなの!」

そうなのだ。酔っぱらうとこの珍獣は必ずサザンの曲でうなり始める。ふだんは鼻歌すら歌わない人なのに。

珍獣「エッでも……サビの部分は力が入ってさ……」

私「 ハッ! サビだろうがカビだろうが耳ざわりなの! いいかげんにしてよ、何回同じ事言わせるの。本当にまじでバカなの!」

珍獣はブツブツ言いながら、いつものようにベッドに横になり、

珍獣「うるさかったらドア閉めてってネ〜」

私「ハッ! だからうなるなって言ってんの! 口むすんで早く寝ろ!」