下戸のぼやき
酒飲みと下戸、どちらが得かと常に考えて生きてきた。どう見てもトータル的に酒飲みではないかと私は思う。
例えば、飲んべーと下戸が一緒になって会食すると、圧倒的に酒飲みが多い。飲んべーとまではいかなくても、嗜む人はいっぱいいる。お酒が好きな人達は限りなくいるのだ。その中で私ら下戸が場を盛り上げようと、どんなに努力しても酒好きな人が一線を越えて珍獣になったとたんに、全部もっていかれてしまう。
なぜなら、彼らは恥ずかしいとか、ためらいという本来人間が持っている性分をアルコールという魔物の飲み物で薄めてしまうので、何の抵抗もなくはっちゃけられるのだ。「エッ、あんなおとなしい人が、うそ信じられな〜い!」ってな人間をいっぱい私は見てきた。ためらいと羞恥心を無くした人間にかなう訳がない。
もっとすごい事は彼らは一晩眠れば、すっかり元の人間に戻る事ができる。なんて都合のいい生き物なのだ。
うちの珍獣も、うなった次の日には旦那に戻り、私がいくら、「昨日もう〜う〜うめいてうるさかったよ〜!」と訴えても、「そんな事はない。本を読んですぐ寝た」と何事もなかったように言ってのけ、あげくに、「俺のあげあし取る前に、自分のイビキがうるさいの知らないの!」などと、まるで勝ち誇ったようにのたまうのだ。
でも彼らは本当に何も覚えていないのだろうか。酔っている間、自分がどんな行動をしていたのか気にはならないのか。よく家の前や玄関で寝ていたとか、朝起きてどうやって帰ってきたのか憶えがないなどと聞くが、本当に何も覚えていないのか私にはとうてい理解ができない。
珍獣である時間とは、記憶がなくなるという事。すなわち記憶喪失そのものではないのか、私だったらこわくて、もしそのような事があったら平常心などたもてない。一度もそのような時間を過ごした事のない私には飲んべーは本当に謎の生き物だ。