下戸のぼやき
そう言えばいつも言われる言葉がある。友達などに私が下戸だと話すと、
「うそだ〜!どうみても酒豪の体型じゃないの〜!」
私は確かにガタイがでかい。見た目はりっぱな肝っ玉おばさん。だからといって、何で酒豪と決めつける、おまけにうそついたって何の得にもならんじゃないの。酒を飲めない人間のイメージって、線が細くて、かよわくてはかなくなくちゃいけないのかと毎回イラッとくる。
こんな事も言われた事があった。店の常連さんに、
「ママって本当にお酒飲めないの〜、人生の半分損してんね〜かわいそうだね〜」
そうなのか、私はかわいそうな人間の部類に入るのか。それもかわいそうな上に損までしてるのか。なんと悲惨な人生なのだ。よし、だったら飲めるようになって人生を倍楽しもうじゃないか、と思い立ちアルコールに挑戦した事もあった。
旦那につまみを作ってもらい、まずはビールに挑んでみた。ちなみに先に記したようにうちは料理屋なのでつまみには事欠かない。世間でいう晩酌気分で「カンパーイ!」とビールを口にした。
「に、苦い‼」やっぱり粉薬ばりの苦さ、それを消そうとつまみをほおばる。「あ〜うちのつまみはうまいな〜」とほっとし、又、ビールを口にすると、「に、苦い‼」せっかくのおいしいつまみでいっぱいの口の中に、あの苦い液体をたらし込む、苦さで、又つまみをほおばる。
そのくり返しで見事に太ってしまった、これでは糖尿が悪化するではないか。は〜やはり私は人生半分損したままで寿命が尽きてしまうのか。旦那にぐちったら、
「母ちゃんは充分生きてます。寿命だって人の倍はあるのに、それ以上倍にしたら妖怪です」
「妖怪と珍獣」そりゃ似た者夫婦じゃん!いや、いや、なんて喜んでいられない。寿命の長い、短いではなくて、人生楽しんで全うしたかという事でしょ。酒飲みの人と下戸で同じ年月生きたとして、酒飲みだけ得をして生きてんじゃ下戸は割にあわないでしょ。そうだよ。まったくだ。