四週間後、再び診察室を訪れたUちゃんは前回のように怯える様子もなくニコニコ顔で私の方へ歩み寄り、私の膝を軽く揺するような仕草をして母親の方へ戻った。母親の話では、前回以降、要求が通らず癇癪をおこすことがほとんどなくなったという。
買い物に行く前に何を買うかをきちんと伝え、それ以外はほしがっても買わない旨をちゃんと伝えてから出かけるようにしたら、ほしがり泣きはなくなっていった。以来、母親は努めて見通しを伝えるようにした。
夕飯を作る時、「これからご飯つくるから、一人で遊んでいてね」とか、「もう少しでご飯できるから待っててね」「ご飯のあとお風呂に入るからお着替えの準備してね」と伝えるようにした。
着替えを自分で選びたがる癖があるので事前にそういう風に伝えるようにしたのである。入浴、着替えがスムーズにいったあと、母親はUちゃんを膝に乗せて一緒にテレビを観るようにしたところ、夕食後の空騒ぎや癇癪も起こさなくなった。
母親はこれまで家事に追われるあまり、マイペースなUちゃんを早く早くとせかしていたため不安定にさせてしまっていたのではと反省し、前もって見通しを伝え、ほめるようにしたら穏やかになっていったという。
最近では、母親が体調を悪くして横になっていると、Uちゃん自身が洗濯したタオルをきちんとたたむなどの、お手伝いまでしてくれるようになったという。二度目の受診の際、つかつかと私の所へ歩み寄り膝を軽く揺すって後ずさりしたのは、自分自身が「よい子になったよ」という誇らしい気持ちを伝えたかったのかもしれない。