作業的写真とはこんな感じです
「作業的写真」という耳慣れない言葉に何のことだろうと思われたかもしれません(図表1)。
作業とは、我々が日常的にすること、活動のことです。作業的写真とは、日常の作業の写真を使って、作業と健康について考えるプロジェクトのことです。日常生活で作業をしている写真を見ながら話を聞いて、作業と健康・ウェルビーイング(wellbeingとは、良好な状態のことです。しばしば幸福、安寧、健康感と訳されます)について理解を深めるプロジェクトです。
この作業的写真についてお伝えするのが、この本の目的です。私は、この方法を参考にして、あなたが作業的写真を実践できることを期待しています。基礎となる考え方や実際の方法については、後の章でじっくり述べていきますが、実際の写真を見ていただくところから始めたいと思います。
まず、いくつかの例をご紹介します。ご覧いただくのは、私の学生や身近な人々が持ってきた作業の写真とその時に聞いたお話の要約です。実際の写真を見て、作業的写真の雰囲気をつかんでください。この本に出てくる人達の名前は全て仮名を使います。
満さんは母親の朝の日課について話しました。
満さんの母親は4年前から、家族の朝食と弁当を作っています。そのために毎朝4時半に起き、ゆっくりお茶を飲み、朝の日課を開始します。母親は家族のみんなが元気で過ごせるように朝食と弁当を作ります。
母親にとって、家族が健康に過ごせるように、仕事や勉強やそれぞれの活動ができるように支えることは価値があることです。朝食と弁当作りは、母親と家族の生活リズムも整えています。
由美子さんが趣味のランニングについて話しました。
由美子さんは20代後半の女性です。平日、由美子さんは病院の空調の効いた空間で終日働き身体を動かしたくなるので、仕事の後は近所を4〜5km走り汗をかいてリフレッシュします。休日にはもっと長い距離を走り、マラソン大会に参加するのも楽しみにしています。
学生時代は中距離選手としてこつこつ努力して、記録を伸ばすことを大切にしてきたので、由美子さんにとって走ることは、コツコツ努力を積み上げることを意味し、自分の自信となってきました。今は走ることで手軽にリフレッシュしています。