作業的写真の目的と立ち位置
では、作業的写真では、作業と健康をどのように見ること、考えることができるでしょう?
はじめにお見せした6枚の写真で少し考えてみましょう。ここにあるのは、すべて日常のありふれた作業です。
写真に写っている人たちは一体、どのように作業をしているでしょう? どのように、この人たちの健康や良い状態をつくっているのでしょう?
1枚目は、母親が第1早起きして、家族のために食事と弁当を作っています。家族が元気に活動できるように毎朝食べ物を準備し、家族の役に立っています。同時に、この日課は家族の生活にリズムを作り出しています。
2枚目は、一日の仕事の後にランニングする若い女性です。彼女は屋内の仕事で緊張した心身を屋外で走ることでリフレッシュしています。
ランニングは、記録のために頑張ってきた学生時代とは違うやり方で、彼女の心身ともに良い状態を作り出しています。
3枚目の写真は、山歩きを楽しむ退職者の方です。若い時には体力任せに、ストイックな山登りを楽しんでいましたが、現在はライフコースの変化に合った楽しみ方に変化していることがわかります。
4枚目は、働くお母さんが自宅で運動しています。腰痛解消のために始めたピラティスを通して、快適に働き続けられるようになり、この作業を続けることを楽しみにしています。
5枚目は、父親が写した洗車をする子どもたちの写真です。忙しい父親には、子どもと過ごす時間はほとんどありません。しかし、父親は、子どもたちとの洗車を通して、子どもたちの成長に気づき、父親の喜びを経験しています。
6枚目はお年寄りのために食事を準備するところです。この女性は脆弱な高齢者の要望に応えるために、工夫することで、健康を支えることにこの作業の意味を見出しています。
なあんだ、作業っていつもしていることで、当たり前のことなんだ。あんまり意識していないけど、確かに日常生活をまわしているなあ。
気を付けながらやっていることも、あんまり注意を払っていないこともあるなあ、と思いませんか? 日常の作業が少しイメージしやすくなったのではありませんか?
では、作業と健康の見方をじっくり考えてみましょう。約100年前の作業療法の始まりからです。
作業の見方
作業療法は約100年前に、社会の中で生活を立て直す必要に迫られた人々を支援するために、作業の専門職が必要だという声から始まりました。
そこには、作業には健康を高める力、生活をつくる力があるという信念がありました。困難にある人々が社会の一員として生活し、自分の人生を進んでゆくのを、作業を使って支援することを使命としたのです。