オカダカツミの登場
その日の朝、役場に用事があった。10時頃、役場から記者が出てきた。
「ちょうどよかった。今、村長に夕刊に出しますよ、と話してきたとこだよ」
「えっ!? あ、そう」(話したんだ……)
会社に戻ると電話が鳴った。そんな気はしていた。
「所長、電話です。オカダさんと言っていますが」
やはりきたか。
「あ、もしもしオカダだけど、熊谷所長さんだなあ」
猫なで声である、それも肩書に「さん」づけで気持ちが悪い。
「あのう、水子地蔵が新聞に出るって聞いたけど」
「それが何か?」
「いやあ、俺は何も知らないが、新聞に出すのを止めてもらえないか?」
「知らないなら関係ないじゃないか」
「いやあ、怒らないでくれ、そうではなくて……」
「そうではない? 水子地蔵のことで話に行ったが居留守を使ったじゃないか。それをいまさらなんだ、勝手なことを言うな!」
私はきれると荒くなる。相手が誰であってもだが、悪い癖だとは思っていない。
「いや、そうではない、そうではない。俺はいいんだ。村上住職が……なんだ……村上住職を怒らせてしまう」
「怒らせて? 怒っているのは隣の叔父だ! 石が飛び込んで壁は壊す、仏壇は倒れる。大ごとになっているじゃないか」
「いや、それは、話はついたんじゃ、ホテルAの会長が補償したと……」
「話がついた? いつ話がついたんだ! ホテルAの会長がそんなことを言っているのか!? 会長に言っておけ。いつ誰が話をつけた!」
電話を切った。2度目の電話が鳴る。