テトラヒメナはどんな生物?
ここで、テトラヒメナについて、説明させてもらいます(『ノーベル賞に二度も輝いた不思議な生物 テトラヒメナの魅力』)。
実は紅茶からミトコンドリアを活性化するMAFを発見するためには、テトラヒメナが不可欠だったのです。テトラヒメナ以外の細胞を使っていたら、MAFは発見できなかったでしょう。
なぜかというと、ウーロン茶や紅茶由来のMAFは、ヒトの培養細胞にはちょっと作用が強すぎるのです。
しかし、テトラヒメナは池や水たまりで自由生活をしている逞しい細胞なので、MAFなんのそのなのです。
テトラヒメナはゾウリムシの仲間で、長さ50μm(1μmは1mmの1000分の1)、幅30μmの単細胞生物で体表に多数の繊毛を持ち、繊毛の運動によって水中を自由に動き回っています。私たちの周りでは池や水たまりに生息しています。私も筑波大学構内の池や水たまりの水を観察したことがあります。古い池や汚れた水たまりの水のなかには、必ずテトラヒメナを観察できます。
テトラヒメナの細胞の前方には餌である細菌などを食べる口部装置があります。口部装置には4枚の膜板があり、膜板を用いて餌を口のなかに集めます。集められた餌は食胞という袋のなかに取り込まれて、細胞のなかに入ります。食胞のなかの餌は消化酵素で分解され、栄養分は吸収されるわけです。
餌が十分あると、テトラヒメナは3時間ごとに分裂して増殖します。3日間で細胞数は1ml当たり500万個まで増殖します。培養が簡単なので、生物学の研究材料として盛んに利用されてきました。テトラヒメナは生物学の研究材料としては100年近い歴史があります。
繊毛運動や鞭毛運動のモーターの働きをするダイニンというタンパク質も、テトラヒメナで発見されました。
さらに、テトラヒメナを材料としてノーベル賞受賞につながる重要な発見が2つもなされています。