MAFの実体

ここでは、抽出したMAFの化学的な性状、MAFの分子量とMAFの部分構造について、藤原君の論文の内容をもとに紹介いたします(『ウーロン茶と紅茶の高分子量ポリフェノール:その精製と性質、そしてミトコンドリアの膜電位上昇における役割』)。

私たちはMAFの抽出分離を試み、前回の記事の図5の分画9から11にMAFが存在することを見つけました(関連記事『「ウーロン茶と紅茶の高分子量ポリフェノール」実験の詳細』)。MAFとは一体どんな物質なのでしょうか?

小澤先生はトヨパールHW-40Fの溶出パターンから、その正体は分子量の大きなポリフェノール(高分子ポリフェノール)だろうと目星をつけました。それを証明するため、小澤先生は、まずMAFの分子量を調べ、次にMAFの分子構造を明らかにしました。

高分子ポリフェノールの分子量の測定には、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)がよく使われます。「MAFの精製とその性状」のなかでも触れましたが、SECで使われる充塡剤には小さな穴(細孔)がたくさん開いています。

分子量の大きなものは細孔に入れないので、速やかに流れ出てしまいます。一方、分子量の小さいものは細孔に入ってしまうため、細孔に入ったり出たりしながら、ゆっくりと流れ出ます。したがって、分子量の大きな成分が最初に溶出し、より小さい分子量の成分は後から溶出するわけです。

すべての細孔に入った低分子成分は、カラムから最後に溶出します。小澤先生はSEC充塡剤としてTSKgelα-3000を用いました。この充塡剤には平均細孔径15nmの穴が開いています。SECの結果、MAFの分子量(数平均分子量)は9,000から18,000であることがわかりました。緑茶にはエピガロカテキンガレート(EGCG)が多く含まれています。

EGCGは強い抗酸化作用を示し、多くのサプリメントに用いられています。ウーロン茶や紅茶のような発酵茶では、茶葉が発酵する際に、茶葉のポリフェノールオキシダーゼによってポリフェノールの重合体が形成されます。