MAFの精製とその性状
私が30年近く研究材料としてテトラヒメナを使っていたという単純な理由で、テトラヒメナを選んだことが、MAFの発見に道を開きました。まさに天の恵みであったわけです。
では、紅茶を例にして、MAFの抽出分離の実際を紹介しましょう。紅茶の茶葉30gを、沸騰したお湯1Lで10分間抽出しました。これは私たちが紅茶を飲むときとほとんど同じ方法です。
次に、1Lの紅茶抽出物からカフェインやカテキン、フラボノールなどを、有機溶媒の酢酸エチル(200ml)で抽出しました。
紅茶抽出物と酢酸エチルを混ぜて激しく攪拌(かくはん)すると紅茶の液層が下に、酢酸エチル層が上に分離します。
上の酢酸エチル層にカフェインやカテキンが抽出されました。この作業はなかなか面倒で、10回ほど繰り返さないとカフェインやカテキンは完全に除くことができません。
下に残った紅茶の液層(1L)に求めるMAFが存在することが、テトラヒメナを用いた検定方法で明らかになりました。
ここで、小澤先生はMAFがポリフェノールの一種であると予想し、紅茶の液層からポリフェノールの抽出分離を試みました。
この紅茶の液層に塩酸を加えpHを3.0に調整した後、n-ブチルアルコール(200ml)で抽出しました。MAFを完全に抽出するため、この操作を4回繰り返しました。
得られた800mlのn-ブチルアルコール抽出物から、MAFを濃縮させるため、エバポレーターという器具を用いて、n-ブチルアルコールを蒸発させました。さらに濃縮された液を凍結乾燥機にかけて、粉末にしました。
得られた粉末は紅茶の色をしており、全部で3.8gありました。この粉末をn-ブチルアルコール抽出物と名付けました。