MAFの精製とその性状

ウーロン茶や紅茶からMAFの抽出分離に成功したことが、この研究の最も重要な出来事でした。

そこでここでは、MAFの精製法とその性状について、2007年に発表した論文をもとに紹介します(『ウーロン茶と紅茶の高分子量ポリフェノール:その精製と性質、そしてミトコンドリアの膜電位上昇における役割』)。

最近、ネット上では、Xが健康に良い、Yは老化を防ぐ、Zは認知症を予防するなどという情報があふれています。

しかし、XやY、Zなどに含まれている素晴らしい生理効果を持つ生理活性物質を分離同定して、その性状を明らかにできたものはほとんどありません。なぜかというと、夢のような効果を持つ生理活性物質をXやY、Zなどから分離精製することは、至難の業だからです。

それらに含まれている極少な生理活性物質を分離精製しているうちに、雲消霧散、跡形もなくなくなってしまうことが多々あるのです。

私たちがウーロン茶や紅茶からMAFの抽出分離に成功した理由は、小澤哲夫先生が私たちの研究グループに参加してくれたことだと思います。

小澤先生は40年近く緑茶や紅茶の有効成分を分析してこられ、その経験と技術は日本一と言っても過言でありません。まさに鬼に金棒とは小澤先生のことだと思います。

ウーロン茶や紅茶にはミトコンドリアの酸素呼吸を促進する因子が含まれているという話を聞いて、小澤先生は直感的にこの因子はあれに違いないとひらめいたそうです。それは、小澤先生が1996年に紅茶から分離精製した物質です。

分子量の大きなテアルビジン(カテキンがたくさん結合したポリフェノール)に含まれる一成分で、とてもユニークな物質でした。小澤先生はこのひらめきに基づいて、ウーロン茶と紅茶のMAFの抽出法を確立しました。