紅茶からMAFを抽出分離する方法をわかりやすく紹介しましょう。

①紅茶から酢酸エチルを用いて、紅茶に含まれる物質を紅茶層(水層)と酢酸エチル層(有機溶媒層)に分離します。これを溶媒抽出法といいます。

②紅茶層と酢酸エチル層のどちらにMAFが存在するかどうかを、テトラヒメナを用いて調べます。テトラヒメナのミトコンドリアを活性化する成分を、エバポレーター(濃縮装置)を用いて濃縮し、さらに凍結乾燥機を使ってパウダーにします。

③活性があるパウダーを有機溶媒で溶かして、それをカラムクロマトグラフィー法で分画します。

④どの分画にMAFが存在するかを、テトラヒメナを用いて調べます。

⑤テトラヒメナのミトコンドリアを活性化するMAF分画を、再びエバポレーターを用いて濃縮し、凍結乾燥機を使ってパウダーにします。

このような5段階のステップを経て、MAFの抽出分離に成功しました。抽出分離に用いた技術、溶媒抽出法やカラムクロマトグラフィー法は一般的に使われる技術です。

ここで最も重要な成功のカギは、ミトコンドリアを活性化する能力があるかどうかの検定方法でした。

この検定方法は、木村実果さんが開発した方法を藤原隆史君が改良したものです。木村さんの方法は、テトラヒメナを検定する物質と一晩混合した後、テトラヒメナを洗浄します。洗ったテトラヒメナをローダミン123で染色し、蛍光顕微鏡でミトコンドリアの蛍光を観察するというものです。染まったかどうかはわかるのですが、定量的な測定ができませんでした。

藤原君が改良した点は、ローダミン123で染色したテトラヒメナのミトコンドリアの蛍光強度を蛍光分光光度計で測り、定量的な測定を可能にしたことでした。

定量化できたということは、MAFのパワーを数値化できるということで、他の物質との比較も可能になりました。とても重要な改善でした。この測定法はその後も改良が加えられ、相澤圭治君が完成させました。

もう一つ強調したいことがあります。それは、検定に使う細胞としてテトラヒメナを選んだことです。

後に、マウスの培養筋細胞などを使って検定を行いましたが、うまくミトコンドリア活性化能を測ることができませんでした。

マウスの細胞に対して、MAFは効果が強すぎるようです。MAFの濃度が薄いときはミトコンドリアの活性化を示すのですが、濃度を濃くすると細胞の表面にMAFが張り付いて、細胞に障害を与えてしまいました。

ところが、テトラヒメナはそのような障害を受けることがなく、MAFの濃度を濃くしても、濃度に応じてミトコンドリアの膜電位が上昇したのです。