第1章 紅茶に含まれるMAFとは
MAF発見のきっかけ
私の頭のなかでさらにイメージが膨らみます。
「酸素呼吸の燃料は糖と脂肪だ。酸素呼吸が盛んになると、糖と脂肪の消費量が増加するだろう。これは、メタボリックシンドロームの予防効果があるに違いない。
酸素呼吸によってエネルギー源であるATPがたくさんつくられれば、ヒトは元気になり、活発に活動するだろう」。
これは面白い、私の探求心に火がつきました。
「ウーロン茶のなかにあるミトコンドリアの酸素呼吸を活性化するものを探そう。これはきっとヒトの役に立ちそうだ」
ということで、細田君との共同研究が始まりました。
彼の助力によって、サントリーから3年間(1999〜2001年)、奨学寄付金を得ることもできました。細田君は福の神。彼はとてもよく協力してくれました。
私の研究室に卒業研究のために入ってきた木村実果さんに、この話をしました。彼女は大いに興味を持ってくれました。
彼女のねらいは「サントリーのウーロン茶から、ミトコンドリアの酸素呼吸を活性化する物質を発見して、サントリーに入社しよう」というとても現実的なものでした。
私は素晴らしい目標だと思い、彼女を応援しました。彼女がうまく行けば、私もうまく行くわけですから。
木村さんは、筑波大学に女子アイスホッケー部を創部したメンバーの一人で、4年生になっても部長として部員をリードする存在でした。
その木村さんが最初にトライしたのは、ウーロン茶成分が酸素呼吸に関わる酵素活性を上昇させるのではないかということでした。
クエン酸合成酵素などのクエン酸回路の酵素にウーロン茶成分を加え、酵素活性を上昇させる成分を探そうとしたのです。