本当のことを話すときが来たと考えた女房のけいこちゃんは、ネットバンキングの残高の画面を出して言います。

「聞いてもらいたい話があるんだけど……あたしの話が済むまでは、どんなことがあっても乱暴なことはしないって、お前さん約束しておくれよ」

こうして女房のけいこちゃんは山田くんに、三年前までの出来事は夢ではなかったこと、そして山田くんのことを思って三年前に思い切って今までの生活のすべてを捨てて納屋のような家に移り住んだことを打ち明けました。

「お前さんが座布団を運んだり、タイヘイを突き飛ばして腕を骨折したりした時には、あたしは、そっとテレビに手を合わせて、いつもお前さんに謝っていたんだよ……この金も大事にネットバンキングに預けておいたんだけど、これを見せて、お前さんが元の投機の悪魔に戻っちゃいけないと思って、あたしゃ、心を鬼にして今まで隠してきたんだよ。

でも、もうお前さんも一流の座布団運びになったんだし、もうこのお金を見せても大丈夫かと思って見せたのさ。自分の女房に嘘をつかれるなんて……。どうか気のすむまで、あたしをぶつなり蹴るなりしておくれ」

「おうおう、待ってくれ。どうして、蹴るどころの話じゃねえや。蹴るのはサムライブルーの奴らに任せておけってんだ。そんなことをしたら罰が当たって、また腕を骨折しちまわあ。えれえや、おめえは、全くえれえ」

山田くんは怒るどころか、自分をここまで働き者にしてくれたのはけいこちゃんのおかげだと、礼を言いました。許してもらったけいこちゃんは、機嫌直しにと用意しておいた三年前のあのレミー・バルタンを出します。こうして懐かしいお酒が注がれた山田くんは、

「なつかしいなあ。おい、バルタン星人しばらくだったな、よくもまあご無事で。たまらねえやどうも……いや、やめとこう……」

「どうしたんだい?」

「また夢になるといけねえ」

この後山田くんは、不動産で騙されたり、破産した人を救済するための、匿名のサイトを立ち上げた。サイトは評判になり、たくさんの人が未然に救われた。

ただし、すでに不当な契約を結んでしまっていたり、土地を騙し取られたりしてしまった人までは救済することができず、山田くんは歯がゆさを感じた。

けいこちゃんとラブラブで子だくさんの山田くんが、なぜ『怨み・ハラスメント』の一員となったかは、定かではない。