マーケティングとは?
マーケティングにもさまざまな種類や方法がありますが、アプローチの向きでいえば、外側か内側の二つになります。アウトバウンドとインバウンドですね。
アウトバウンドの端的な例は「営業」で、企業・会社側から積極的に自己の都合により外へ発信していく手法ですが、これは現在の企業経営にはあまり適していないと私は考えています。
また、SNSなどのメディアを通してユーザーに向けて役立つお得な情報を発信することによって、潜在的なユーザーに刺激を与え、「欲しい」「行きたい」「やりたい」と思わせるインバウンドマーケティングのみで十分な効果が得られる時代です。
そして、これからの時代の経営では、マーケティングなしに成果が期待できないのも実際のところでしょう。
「正解のない時代」と言われています。その時代はどんどん複雑に難しくなってきます。そして、その反動からか、シンプルで人に優しい思考になってきた部分もあります。
例えば、自動運転の便利で楽ちんな自動車が開発されると、1970〜1980年代などのマニュアル車でデザインの優れたノスタルジックなビンテージカーが注目を集めます。
マツダのロードスターなどのオープンカーと言われるコンバーチブルな(屋根がオープンになるタイプ)車は、以前人気はあっても所有する人が少なかった車ですが、最近は多く走っているのを見かけます。
夏は暑くてオープンにはできず、冬はコートを着て運転をしなければなりません。昔は、カリフォルニアのような天候のところでなければ走らせることのできないタイプの車でした。
ですが、いまは世界的に人気のスポーツカーとなりました。すなわち、「便利」だけが人を惹きつけるのではありません。むしろ「便利」というキーワードすら、煩わしい時代に変わっていくでしょう。
私はマーケティングを「惹き寄せるチカラ」と定義しました。企業の成長過程の一歩前などでは、営業力を強化して営業による活性化を高めなければならないときもあるでしょう。営業とは、それ自体がマーケティングを支援するために必要な行為だからです。そして、マーケティングには予算が掛かります。
しかし、私がこの本に書くマーケティングとは、「人間力」のような「人と人の関係の改善」により行うものです。どちらかというと、哲学・自己啓発・経営学などに近いかもしれません。
ドラッカーが説いていた「企業には2つの基本的な機能が存在することになる。すなわち、マーケティングとイノベーションである」という話は、小さな会社においてこそ重要なことになります。
企業が創業期や成長期前などには攻撃的な営業活動も必要になるのでしょう。また、逆境を乗り越えなければいけないときも同様です。
しかし、そんなときでも「惹き寄せるチカラ」を意識する必要があります。この『惹き寄せるチカラ』の前著である『小さな会社のマーケティングとは』ではテコの原理を応用したマーケティングのことを、投資用語を引用して“レバレッジ”と名付けました。
川の流れを利用して対岸に移動するカモのように時代の流れを利用したり、他人や他社の力を借りて自社を成長させる方策です。これが上手くいくと自分でも信じられないほど自社の業績アップに大きな力を提供してくれます。