デール・カーネギーの『人を動かす』に似たような話になるかもしれません。
どんなに経営が苦しいときであろうが、創業間もない頃であろうが、「惹き寄せるチカラ」のマーケティングは、一見遠回りをしているように思えるかもしれませんが、企業を成功させるためには絶対的に必要なものであるということです。
多くの経営者も知らず知らずにマーケティングの一部を実行していたり、これまでに偶然であろうが何であろうが「惹き寄せるチカラ」を持っていたのかもしれません。
「経営者は人格者でなければならない」と考え、人間づくりを実践してきた経営者や「聞き上手」だったり「謙虚で誠実」である経営者は、自然にこのチカラの要素を蓄えています。
そして、企業の機能の一つは、マーケティングです。ピーター・ドラッカーが説くように「企業」と「顧客」という関係でしか、企業は存在しません。
「顧客」なしではビジネスは成立しないのです。「顧客を知らない」で、「顧客の変化に気づかない」で、企業は存続できないのです。それは大きな企業であろうと、小さな地方の商店であろうと同様です。
しかし、私はそれだけでは納得がいきません。「企業と顧客」の関係の周囲には、協力業者や付帯サービス産業の企業や人々がいるからです。
誰が顧客になるのかの予想は不可能です。この人は顧客になりそうもないからAで対応して、この人は顧客になりそうだからBで対応するような考え方では可能性を狭めるだけです。Aの周りにはBが複数存在します。重要なのは、顧客を売り手が選ぶ必要がありますが、売り手側が顧客になる可能性を判断してはいけないということです。
そこで「惹き寄せるチカラ」が威力を発揮するのです。「惹き寄せるチカラ」があれば顧客が自然にやってきます。だから、いつも「幸せのおすそ分け」をしている毎日になります。
どんな時代でもその企業が扱う商品やサービス、もしくは製品に価値があるからビジネスが成立しています。
私たちが生活するうえで、また企業経営するうえで、自分のできないことや自分では得意でないことを他者に委ねます。これがアドラー心理学的には人類の生存するための分業システムであるのです。
しかし、需要と供給のバランスという原則から考えると、現在は顧客が商品・サービスを選ぶ時代になっています。つまり、価値観の多様化する時代には「誰とつながるのか?」が重要になります。
そこにこそ、小さな会社が実行しやすいマーケティングがあります。顧客を友と考えて対応するという、一見利益を無視したような考え方です。しかし、それが「惹き寄せるチカラ」のつくり方の一つなのです。
そのはじめの一歩が「誰と友だちになるのか?」ということです。