優輝と慶三
永松は、類は友を呼ぶ、という諺に基づいて未代の父親像を想像してみた。木村、原田系の無骨派なのか。いや谷山のような理論家なのか。それとも、まったく違う系列の優しい紳士だったのか。永松は勝手ながら、最後に浮かんだイメージだけを残すことにした。
「高校の同級生だから、けっこう長いわよね。卒業してからはずっと、四人で麻雀やってたみたい」
「麻雀仲間なんですか」
「それだけじゃないんだけど、麻雀に使った時間は相当なものよ。他のメンツじゃ面白くないとか言って、いつもこのメンバーで卓囲んでたわね。一番奥のテーブルが閉店後の麻雀席に変わるんだけど」
「麻雀ねえ」
これは現役大学生の永松にとって、少し意外な感じだった。
「君はしないの?」
「やり方がわからないです。周りでする奴もいないし」
「まあそうよね。今の時代、ゲームが溢れてるわけだしさ」
「でもよく、毎日来られますよね。仕事ってしてないんですか?」
「もうみんな、一線を引退してるのよ。子供はとっくに社会人になってるし、年金もあるしね。父が一番結婚遅かったから、あたしだけ年離れてるの」
「気軽でいいなあ」
「今までに苦労してきた結果だと思うよ」
「でもなんで、僕にあれこれ聞くんだろう? 尋問責めには、もう慣れましたけど」
「……あまり気にしなくていいと思うわ」
洗い物も片付いたので、未代は話を切り上げた。一度に説明すると長くなりすぎる。それにこの永松君は見た目より打たれ強そうだから、問い詰められて、もう辞めさせてください、とはならないだろう。