パラダイムチェンジとメディア

異常気象や貧困(による暴力・テロ)など、グローバルでの生死にかかわる問題については、2015年に国連総会で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)で、貧困を無くすことや気候変動対策が盛り込まれていたり、同じく2015年にCOP(気候変動枠組条約締約国会議)でパリ協定が合意されたり、世界各国が協力して地球規模で至急対応を進める必要があることは認識されている。

しかしながら、その後パリ協定から米国が離脱し、新型コロナウィルスの死者の割合は貧困層で高いことが指摘されるなど、一筋縄には対応が進まない状況にある。これまで本書では個人の世界像や意思決定に関わる分析をしてきたが、最後に、社会レベルでの世界像や意思決定について考える。

個人レベルの、世界像・意識・意思決定の基準やその変更のトリガーは、社会レベルでは、何に相当するか? 図表にざっくりまとめてみた。

写真を拡大 図表 個人レベルと社会レベルのアナロジー

機能的に、個人レベルの「意識」は、社会レベルでは「メディア上の情報」に対応するだろう。1章で見てきたように、個人の場合、意識したことは記憶される。そして、新たな物事の見方を理解し何度も意識することで、世界像や意思決定基準の変更が加速する。

同様な機能を、社会レベルではメディア上の情報が持つ。メディア上の情報(社会レベルの意識)は、個人に意識されることで、個人の意思決定基準の変更のトリガーとなり、何度も意識されることで、個人レベルの意思決定基準・世界像の変更を加速する。

つまり、メディアへの参加・情報アップロードを積極的に行う(社会レベルの意識に上げる)ことが、パラダイム・世論の変更を加速するということ。ただし、メディアに声を上げることだけがパラダイムチェンジの加速に有効、ということではない(例えば、口コミも加速する)。

あくまで、個人レベルの世界像や意識のアナロジーで社会を考えた場合の話である。余談公職選挙法における投票の記載事項サンパウロに駐在していた時、大統領選挙があった。ブラジル人に、選挙に行くのか?と聞くと、選挙に行くのは義務で、罰則もあるとのこと。

街中に貼られる候補者のポスターには、番号が書いてある。投票は用紙に記入するのではなく、学校などに臨時に設置する選挙用の端末で、候補者の番号を入力する方式だ(読み書きができない人でも投票可能)。投票日の夜、テレビで選挙速報を観ようと思い、投票の終了時刻の少し前から番組を観ていたら、終了時刻の後、瞬く間に正確な投票結果が表示された。