明日は我が身、我が上司
以前勤めていた職場での話です。
別の部署に、新しいマネージャーが異動してきました。私が所属する部署の後輩が、過去に一緒に仕事をしたことがあって、
「あの人、少し癖があるんですよね。どうも素直についていけないというか、あまりお近づきになりたくないなあ」
そう周りに漏らしていたので、
「そうか、それは気をつけなくてはいけないな」
という気持ちになっていました。
そんなある日、外出した帰りに、そのマネージャーと偶然一緒になりました。その方は、気さくなところもあって、気軽に話しかけてきます。
「仕事のほうはどう? うまくいっている?」
後輩からインプットされた情報があったので、
「ええ、まあ」
不愛想ともとれる返事をしました。するとマネージャーは、気にする様子もなく、また話しかけてくるので、どうしても歯切れの悪い応対に終始してしまいます。
おそらく、私に対する印象は、決して良いものだったとは言えないでしょう。それから間もなくして、社内で人事異動の発表がありました。
何と、例のマネージャーが直属の上司となったのです。
「しまった。あんな応対なんかしなければよかった。どうしよう」
内心、穏やかではありません。直接話した範囲では、それほど癖があるとは思えず、後輩の情報を鵜呑みにした、自分を責めたりもしました。と同時に、その後の挽回策も講じることになります。
当時は、部署も個人も、営業目標という数字を追っていたので、
「まずは実績を上げ続けて、信頼を勝ち得るしかない」
「でも、それだけでは足りないな。部下として、できる限りの誠意も見せなければ」
など、あれこれ考えながら、上司対策に精を出した記憶があります。幸いにも、日々仕事をする中で、その上司が大きな障害になることはなく、むしろ、数字を作るという観点からは信頼してもらえたこともあって、比較的良好な上下関係だったと思います(上司の本心がどうだったかは、知る由もありませんが)。
会社という組織の中にいる限り、いつ何時、誰が、自分の上司になるかは予測できません。「想定外」のことも起きてしまいます。従って、常に「不測の人事」に備える必要があります。
周囲の意見や感想、噂話はあくまでも参考データです。大切なのは、自分が直接本人と接した際に肌で感じたことを、最優先するということです。
その上で、周囲から入ってくる種々雑多な情報を取捨選択し、総合的に判断しなければなりません。もちろん、予測がはずれて、噂通りの結末を迎えることもあります。
第1章で触れたように、上司が損得勘定で動いた場合には、せっかく信じて頑張った結果が、まったくの無駄骨となってしまいます。されど、いきなり悪い印象を与えてしまうのは、得策ではありません。