多面評価の盲点!

匿名性はない成果主義とほぼ同じタイミングで一世を風靡ふうびしたのが、多面評価の制度です。

この制度は上司や部下、同僚が、対象者の社内における行動について観察した内容を、本人にフィードバックする仕組みで、いわゆる、人事上の評価ではありませんが、それを補完する形で、幅広く導入されています。

結果を人事評価の一部として、評価制度に組み込んでいる会社もありますが、一般的には評価の内容を補うもので、上司の、部下に対する偏った判断を、けん制する役目も果たすことになります。

「多面評価」にも、忘れられない思い出がいくつかあります。まずは、日系企業で仕事をしていた時のことです。その会社では、年に1回、部下が上司に対して、無記名でアンケート調査を行うようになりました。

アンケートは、極秘扱いとして、直接人事部に提出する仕組みだったので、日頃感じていることも率直に記入できます。せっかくの機会なので、本音で書いて提出することにしました。

後になって分かったのですが、この時の多面評価制度には、重要なことがふたつ隠されていました。ひとつ目は、アンケート調査の結果が集計された後、上司に直接書面で通知されることです。

ふたつ目は、アンケートに記入する基本情報の中に、評価者本人を絞り込める項目が含まれていたということです。

しかも、フィードバックされる内容には、その基本情報も入っていたのです。後日、上司に呼び出されて、問い詰められたことは言うまでもありません。

そのようなことがあったので、次の会社では、注意して対処することにしました。具体策として、会社の上層部が評価していると感じた上司には、意に反して、意図的に良い点数をつけました。

本当は、平均点以下をつけたかったのですが、逆に、高い評価をして、様子を見ることにしたのです。後で判明したのですが、この会社でも、「誰が、誰を、どのように」思っているのか、がある程度分かってしまう仕組みで、危うく同じミスを犯すところでした。

なお、人事にいた同僚の情報によると、経営陣から評価されていた上司の多面評価は、周りと比べて、「突出して高かった」そうです。

皆、「考えることは同じ」ということでしょうか。