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〈ピアス〉をめぐる「教育」への問い──『京都大学大学院修士論文』より
翌日(木)・翌々日(金)とT男は欠席。母親と連絡を取ると、「ピアスを取って学校へ行ったら」と促すが「とにかく休む」と乗ってこないとのこと。ただし、授業に遅れることを心配しており、「月曜日から登校する」と言っているとのことだった。
他の生徒からT男に対する同情の声が多くあがった。T男の姉を中心とする数名の生徒が直接私のところに、「別にピアスくらい許してあげたっていいじゃん、誰もまねなんかしないし」と言ってきた。
生活指導部会・職員会議で話し合う前に、意見交換会を設定することを打診し、了承を得た。学校よりもピアスの方が大事だとばかりに欠席しているT男の追い風になると思ってのことだった。しかし、逆に担任として指導・相談の表舞台に立ってはいるが、板挟みになって苦しい状況でもあったので、教師集団の意見を生徒に聴いてもらう機会にもなるという考えも頭にはよぎっていた。
月曜日の1校時、道徳の時間に行うことになり、T男に必ず出席し、自分で考えを述べるように電話で伝えた。登校する約束をして、ホッとしているように感じた。
意見交換会では、全生徒がT男が目立たないピアスをしてくることには、特に問題無しという意見を述べた。「授業に支障はないし、状況によりはずせばいい。誰もまねはしない」とのことだった。
それに対して、教師の側は、前年の指導方針を決定する際には中心を担い、積極的に「認めてもいいのではないか」と見解を述べていた教師までもが、本来はそうあるべきではないとばかりに反対の意見を述べ、結局認めてもいいのではないかという立場は私だけとなってしまった。