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〈ピアス〉をめぐる「教育」への問い──『京都大学大学院修士論文』より

私が学級担任をしていた中学2年生のT男が、夏休みにピアスの穴を空け、着けていたと部活動の顧問の先生から報告があった。そして、2学期の始業式の日に目立たない透明のピアスを着けて登校した。

T男のピアスの穴を一番最初に空けたのは母親だった。小学生時分のことであり、学校の風紀を守るために協力してほしいと要請し、それを母親が受け入れ、穴をふさいだと聞いていた。

中学生になって空けたのは、1年生の時だった。この時はT男が自分で空けたという。

小学生の時に母親が空けたことを伝え聞いていたこともあり、生活指導部での話し合いにおいては、児童相談所編集の『問題行動対応マニュアル』を参考にして、「保護者の了解のもと、衛生的なことに十分配慮し、ピアスの穴を空け、プライベートな時間につけることは認めるが、学校にはつけてこない」ということで一応指導方針がまとまった。

結局、指導の窓口になっていた当時の学級担任とのやり取りの中で、学校にはどのようなものも一切着けてこないという約束のもと、朝ピアスをはずして登校し、夕方帰宅した時には穴がふさがってしまったとのことで、一応の決着を見た。

そのため、指導方針についての継続討議ができずに尻つぼみの感があったが、実際にはこの指導方針に対して、納得がいっていないという職員室全体の空気が感じられていた。

そして、2年生の夏休み。

部活動の時にピアスを着けているのを部活顧問であり、また、1年生時の学級担任でもあったH教諭が見つけ、指導したとのことだった。この時、前年の指導方針の内容を伝え、ピアスをはずさせた、とH教諭より聞いていた。

始業式の日に面談をした。私の方から再度、学校の指導方針の確認をし、学校文化についての話などもした。その時のT男の主張はこうだった。