俳句・短歌 短歌 2021.04.05 歌集「祈り」より三首 歌集 祈り 【第19回】 佐藤 彰子 ―ああだから月はみんなに愛されるんだ自分ひとりを見てる気がする― 夜明けに人知れずそっと咲く花のように、 それでいいんだよ、と許してくれるような、 自分のかわりに、幸せを願ってくれるような。 心に灯りをともす、優しくあたたかな短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 我はいま儚はかない恋をする女ブルー・ローズにくちづけをして 頼りなく生きてる日々に花達は句読点となる つぎは紫陽花あじさい 鐘の音を吸いたる色か藍深く高幡山にあじさいの咲く
小説 『恋愛配達』 【第15回】 氷満 圭一郎 配達票にサインすると、彼女は思案するように僕の顔を見つめ「じゃあ寄ってく?」と… 「本業は酒屋で、宅配便はバイトです。ところでさ」ぼくはたまらず差し挟まずにはいられない。「さっきからなんなの、どっち、どっちって?」「だってあなた、ドッチ君だもん」「何、ドッチ君て?」すると瞳子さんは、ぼくの胸に付いている名札を指差した。これは配達者が何者であるのか知らせるために、運送会社から貸与されているものだ。ぼくの名前は以前病室で宴会を開いた時に教えていたはずだが、漢字までは教えていない。…
小説 『ヒスイ継承』 【新連載】 守門 和夫 発明好きなおじいちゃん。いつも失敗してるけど今回はなにやらいつもとは違っていて…!? 秋が深まり、イチョウの葉が輝くような黄色になった、ある土曜日の朝のことだ。川越市のカルガモ小学校三年生の星野波奈(ほしのはな)は、電話の呼び出し音で目が覚めた。時計を見ると、まだ六時になっていない。だれも出ない。しかたないので一階に下りて、居間の電話の受話器を取り上げた。「波奈、すごいよ! 眠っているうちに、本が読めてしまう装置を発明したよ」「ほんと?」「今すぐ、そっちへ行くよ」波奈が返事をしな…