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家庭教師
「あのさ、今日学校行ったんだ。あんま親しいダチいないから、マジ暇だった。ぼっち弁だったし。ウザイからテニスの先輩のとこ内緒でLINEしたら、また遊びに来ないかって誘われた。またセックスされたら嫌だからうまく断った。やっぱ、学校ウザイ! でも、学校行くとママが喜ぶから……。だから、ウチ、たまには学校に行かないと。ママだけは不幸にしたくないから」
「そうだったんだ。偉いじゃん! 行けるときは行きなよ!」
彼女は黙って窓の外を見ていた。
「今日は星が綺麗だったよ。スクーターで来るとき、風が気持ちよかったな」
と僕は違う話題を持ち出した。
「え、あんた、スクーターで来てんだ。ウチ、乗ったことないよ」
と彩さんは興味を示した。
「そうなんだ。まあ、女子はあんまりバイクに乗んないもんね」
彩さんは、ぶりっ子みたいに甘える口調で、
「あのさ、今日、帰るとき、ウチにも乗せてよ。もちろん、後ろだけど」
と懇願した。僕は躊躇した。まだ、そんなに親しくなってないし、親が許すかどうか。
「まあ、僕はいいけどお母さんが何て言うか」
「そんなの平気だよ! ママは許してくれるよ! ウチに甘いから」
「それじゃ、あとで聞いてみるよ。まあヘルメットもあるから大丈夫だと思うけど」
「ふーん、ヘルメット被るんだ」
「当たり前だよ。ノーヘルじゃ捕まるよ。んじゃ、スクーターには乗せるから勉強しようよ」
「わー、めっちゃ嬉しい! でもやばいな、勉強やるのか」
僕はちょっと強く出た。
「そりゃそうだよ。やることやらなくちゃ、バイクなんか乗せないよ」
「わかったよ、やるよ。英語ならいいや!」
「ようし、そうしよう!」
勉強のあとで、バイクのことを夫人に聞いたら、
「え、よろしいんですか。申しわけありません!」
と彩さんの言ったようにあっさり了承した。夜のバイクは危険だから彼女にバイクのベルトをしっかり握っているように注意した。
数多の星が煌めく夜空の下を、夜風を切って走る爽快感は格別だ。彩さんは、初めての体験に小さな子どもみたいに、
「きゃー、ヤバイ。めっちゃ気持ちいい! けっこうスピード出るんだ!」