損得勘定が査定基準
「気心知れた仲だったので信頼していたら、突然裏切られた」という経験は、誰にでも一度はあるのではないでしょうか。「相性の良し悪し」の裏に隠れているのが、この「損得勘定」という厄介な意識です。
外資系企業で働いていた時のことです。全社を挙げて、新たなビジネスモデルを実際に軌道に乗せるプロジェクトに参画する機会がありました。目指すべきビジネスに関する実務経験があった私は、ほかに経験者があまりいなかったこともあり、当時の責任者からとても重宝されました。
責任者は、社内でも評判が真っ二つに分かれるタイプの方で、私の部下からも、「あの責任者には気をつけたほうがいいですよ。最初はいい顔するけれど、その後に切られた人を知っているんで」との忠告をもらったほどでした。
しかし、実際にプロジェクトが進む中で、特にそれらしき兆候はなく、むしろ、こちらのイメージ通りに(時にはイメージ以上に)ことが運ぶので、責任者に対する妙な噂のことはすっかり忘れて、充実した日々を過ごしていました。
責任者と夜食事をしている時も、「やあ、ご苦労さん。君の給料もっと上げてあげないといけないね」などと持ち上げられて、すっかりその気になっていました。